EP 49
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「柳田さん、今日はお食事にお誘いくださって、ありがとうございます」
今日の優里さんは、ホワイトのシフォンブラウスに、水色の軽めロングスカート。ローヒールの靴がなんとも可愛い。髪は後ろにひとつでまとめてあって、くるりと後れ毛が優しい雰囲気を作っている。
「いえ、食事を楽しんでいただけたら、良かった」
カフェでの食事。優里さん特別仕様にしたメニューから、豆腐グラタンと低糖質バニラパフェを気に入ってくれたようだ。美味しい美味しいと連呼して、その都度ぴょんっと跳ねる。
「お豆腐のグラタンですか。これはヘルシーですね。私、たくさん食べていいんですね!!」
とっても嬉しそうだ。
「今日は好きなだけ、食べてね」
シャンパンを開けた。優里さんのグラスへと注ぎ入れる。シュワシュワな泡が珍しいのか、優里さんの視線は釘づけだ。可愛い可愛い。
「これ美味しい!」
コブサラダだ。卵、アボカド、トマト、鶏、ベーコン、ブルーチーズ などが色とりどりに盛りつけられている。
「鳥のささみなんかは筋肉をつけるのにもってこいだね」
「はい。健康的でしかもこんなにも美味しいなんて。幸せですぅ」
パクパクと食べながら、ほっぺを触る。
その笑顔を見て、俺はこれほどまでに幸せな気持ちになる。
(優里さんの笑顔、好きだな……)
ごくっと唾を飲んだ。もうそろそろ、プレゼントを渡すタイミングだ。
俺は側に置いておいた大きな包みに手を伸ばした。
「優里さん、あの……今日は夕食に付き合ってもらったお礼に……これプレゼントなんだけど……」
優里さんはフォークを置くと、ナフキンで口元を拭いた。
「え、そんなっ。こんなに美味しいものを食べさせていただいて、その上プレゼントまで……申し訳ないです」
優里さんは、しょんと申し訳なさそうな顔をした。
これも今まで付き合った女性たちには、とんと無縁の表情だ。こんな健気な表情、一度もお目にかかったことないからね。
「いや、それはいいんだよ。ただね……気に入ってもらえるかどうか……自信がなくて」
「なんでしょうか」
はい、と俺はプレゼントを渡した。
「なんか大きいですね」
もちろん、50㎝を超える大物だ。
優里さんは、さっきとは打って変わってわくわくの表情で、包装紙を破っていく。中から出てきたものは……
「……筋肉」
そう。俺のシックスパックを写真に撮り、それを抱き枕にプリントしたものだ。
「その……びっくりしたよね。姉貴から、優里さんは筋肉が好きで、特にシックスパックをこよなく愛していると聞いて……」
「……しししシックスパック」
優里さんは明らかに動揺している。ってか引いてるんだな。くそっ、やっぱり失敗じゃないかっっ。姉貴のヤロウ!!
「こんなの要らないよね。ごめん、こんな変なもの……やっぱり不動産にすべきだったかな」
「いえ、ありがとうございます。嬉しいです」
にこっと笑ってくれた。
ああ、なんて優しい人なんだ。天使か。
優里さんは、その手で筋肉をナデナデしてくれ、頬を引っ付けながら、「わあ、ふかふか!! 気持ちいいです」
「ほんと? そう言ってもらえると、気も楽になるよ」
俺は、後悔を引きずりつつも、「枕かクッションか、なんなら踏み台にでもしてもらえれば」と言った。
「抱き枕にしますね」
ふふふっと笑って、ぎゅっと抱き締めてくれた。まじ天使だな。
「優里さん、筋肉好きなんですね」
すると、顔を苺大福にしながら、「はい。お恥ずかしいんですが、筋肉フェチっていうか。リリさんには確かジムの筋トレの話をした時に、お話ししてて。覚えていてくれたんですね。リリさんにもお礼をお伝えください」
あれ? この流れは?
「フェチですか。そうですか。筋肉ならここにもありますよ」
俺はお腹をペンペンと叩いた。
「はい。以前、お写真撮らせていただきました。あの! もしよろしければ、もう少し接写したものを撮らせていただいてもいいですか?」
ありゃ? もしかして?
「もちろん良いですよ! じゃあ今から俺の家に来ますか?」
えええ? まさか! の展開か?
「ほんとですか? お邪魔します」
優里さんは、筋肉抱き枕をぎゅむっと抱き締めながら、ぴょんっと跳ねた。めっっっちゃ嬉しそうだ。
えええーこんなうまくいくことってあるぅ??
姉貴いぃありがとう!! 良いチョイスだったわあぁぁ。
「タクシー呼びますね」
俺はスマホをタップし、西田ドライバーを呼んだ。




