表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/60

EP 43

首を傾げた柳田様。本日も見目麗しいお姿です。horseマークのついたブルーのポロシャツに、白の綿パン。あーね。よくよく見れば、完全にジムのオーナーだよね、この出で立ちや立ち居振る舞いは。

お姉さんのリリさんだって、エステサロンのオーナーなんだから、柳田さんだって、あり得る話なわけで。

(この美貌と筋肉に、ジムのオーナーだってなったら、もっときゃあきゃあ言われて投げ銭どころか、一周回ってファンクラブできちゃうだろうから、それで黙ってたんだろうな)

私は無理にでも笑顔を作り、そして言った。

「あのっっ、もちろんこんな私で良ければですけど。柳田さん、『stone』のオーナーさんなんですよね?」

柳田さんは驚いた風な顔をして、「なんで……知ってるの?」と言った。

「黒田さんから聞いたんです。安心してください。私、もちろん誰にも言いませんから。それで私、柳田さんにはすごくお世話になったし、『stone』の宣伝に一役買えるならって思ってて。結構これでも筋肉もついたんですよ!!」

そして、腕を曲げて力こぶを見せる。

「ほら!! 結構でしょ? 柳田さんの筋肉を目標にさせてもらって、それでこんなに筋肉がついたんです!!」

「……俺の……筋肉を目標……?」

「はい!! 柳田さんの筋肉みたいになりたいって、ずっと思ってて。筋トレのコツとかも教えてもらえて、本当に助かりました。だからってことはないですけど、お礼のつもりで。私のビフォーアフターもじゃんじゃん使ってください」

柳田さんは少しぼーっとした雰囲気で、マグカップのコーヒーを飲んだ。

「うん。ありがとう。気持ちは嬉しいけど……」

そして、ぐいっと飲み干すと、「もうそろそろお暇するね」と腰を上げた。

あまりの退出の早さに私はつい。

「あ、柳田さんっ、いただいたもので恐縮ですけど、良かったらクッキー一緒に食べませんか?」

「いや、遠慮しておくよ」

「でも、すごく美味しそうですよ。味見でも……」

「美味しいってのは知ってるんだ。あの店、俺が経営してるカフェだから」

度肝を抜かれてしまった。

「えっ!! そうなんですかっ。柳田さん、すごい人だったんですね……」

「はは。親から受け継いだものだからね。そんな大層なもんじゃないよ」

「そんなこと……ないです」

遠いと思っていた存在が、もっと遠くへ。

イケメンで筋肉美でジムやカフェのオーナーで背も高くて力持ちで足は長くてバナナを敵視。

これだけ揃っていて、女性がほっとくはずがない。そう。恋人がいないはずがないのだ。私のような、偽物の彼女なんて、必要ない。

ズキっと胸に痛みがあった。

柳田さんは、少し足元をヨロつかせながら、リビングを出て玄関へと向かった。スニーカーを履いて、ふと振り返る。

「優里さん、この前のことは本当に申し訳なかった。それに、ブランディングモデルもやると言ってくれてありがとう」

「い、いえ! 美人でもなんでもない私が、厚かましいったらありませんけど」

「優里さんは、自分ではわかってないかもしれないけど、とても魅力的だし可愛いよ。自信を持ってね」

「あ、ありがとうございます」

そして、もごもごとひと言言って、それじゃあ、と家を出ていった。

「……良かった。ちゃんと笑って引き受けることができたよね……」

溢れてきた涙をもう一度、手で拭った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] _人人人人人人人人_ > バナナを敵視 <  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ [一言] やはり折れてしまわれましたか…… 頑張れ柳田さん!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ