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EP 41

仕事から帰り、夕食をちまちま食べた。ダイエットなんかもうどーでもいいっっと正直思っているけれど、それでもどうしても心にストッパーがかかってしまう。自覚した。それほど、私はダイエットを頑張っていたんだな、と。それも、柳田さんを心の糧にして。

「……ショックすぎる」

じわりと涙が滲んだ。

いつもならこの時間、仕事帰りにジム『stone』に行って柳田さんに拝謁し、そして心の中でお賽銭箱に投げ銭を。

それがルーティンになっていたはずなのに。柳田さんに合わせる顔もなければ、合わせる気力もない。

「はあぁ……なんか悲しすぎる。3股なんて……そんなことなるはずないのに」

なぜなら。

恋人いない歴、25年だからあ!!

痩せると決めたらモテ始め、確かに人生のモテ期なのかもしれない。そりゃモテないよりかはモテる方が嬉しいのだけど。

戸惑うことばかり。今まで縁遠かった恋愛関係。どう対処したらいいのかもわからない。

ぐちゃぐちゃだった。

この荒れ狂う感情の波を、どうやって凪へと導いていいのか。

「こんなときはなにか気を紛らわすことをしなくちゃ……やけ食、いはできないから……推し活とか……」

そう思い、スマホをタップする。

以前撮らせてもらった柳田さんのお顔を拝んでから、柳田さんの筋肉くんの代表格であるシックスパックを拝見する。いやこれは盗撮とかそんなんじゃなくて、Tシャツをチラと上へ上げたところを、許可を得てパシャと撮らせてもらったものだ。

「はふぅ。ステキ。このままずっと見てられる……」

もう少しで下半身が見えるというところで、画像は切り取られている。うわ、かっこよ。完璧な筋肉の畑というか田んぼ? あぜ道を、人差し指ですううぅっとなぞってみたい。しかも匂いたつようなセクシーさがある。完璧だ。

こんなにも、夢中になれることなんて、今までの人生皆無だと言っても良かった。シックスパックを眺めながら、毎日眠りに就いた。

「……そっか。そうだよね。別に私、あんな怒ることじゃなかったかも」

そりゃあジムのオーナーだったらさ。ジムの売り上げも伸ばさなきゃいけないだろうし、宣伝だってしていかなくちゃならない。

(それに利用されただけだとしても……)

私にとって、フリだとしても柳田さんと恋人だなんて、夢のような世界だったから。

スマホの中の柳田さんを見る。そうなのだ。住む世界が違う。彼の存在こそ、遠く遠く、この手は届かないから。

「柳田さんは悪くない。うん。いい夢を見させてもらったって、そう思わなきゃいけないね!!」

シックスパックを拡大する。あ、こんなところにホクロがある。くすっと含み笑い。もうちょっと下の方は見えないかな。目を細めてみる。柳田さんの柳田さんは、写っていない。うっ。

「今度、全身のお写真を撮らせていただこうっと。そうだ! 良いこと思いついた! 私のビフォーアフターの写真を提供する代わりに、柳田さんのブロマイドを請求しちゃおうかな! いーよね、それくらい!!」

無理矢理笑うと、涙が溢れてきた。

「申し訳ないけど、黒田さんにはお食事会、キャンセルさせてもらお」

黒田さんもたっちゃんも、つまるところ、結局は私自身が痩せてスリムになってから好きになってくれたってこと。

「ぽっちゃりのころに告白されたんだったら、もっと嬉しかったのかもしれないな」

えへへと笑いながら、手の甲で涙を拭った。

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