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EP 22

悪い噂を耳にしてしまった。

「白井さんてば、また黒田くんといちゃいちゃしてる!」

「ほんとだ、あの子ぜんっぜん懲りないわね」

「なんの話です?」

俺が話に加わると、ジム会員の女性3人が少しだけ引いてバツの悪そうな顔になった。けれど、噂好きはどこにでもいるものだ。怯んだのは最初だけで、その口からはどんどんとゴシップもどきが湧き出てくる。

「柳田さぁん、ちょっとだけコソコソ話しをしてたんです。あの太っちょの子いますでしょ? あの子、相当な男好きっていう噂なんですよぉ」

?? 男好き? パフェ好きの間違いじゃないのか?

「まさか!!」

俺はすぐさま否定した。そんな話、信じられなかったからだ。そう! 1ミリだって信じられない。

「ほら現に今だって黒田くんにベタベタでしょ?」

言われた方を見ると、確かに黒田くんと一緒に話をしている。けれど、二人はもちろん適正距離だし、バインダーを持って熱心に話しているあたり、ジムのプログラムか食事管理の話にしか思えない。

「ねー。壁ドンされているのをこの目で見たんですよ、私たち」

壁ドン? 壁ドンってあれか? 壁をドンするやつ!

「見かけはそんな男好きには見えないけど、あんな姿あちこちで晒してたらそう思われても仕方がないですよねー」

「ぽっちゃり好みの人もいるから、数打ちゃ当たるみたいにやってんじゃないの?」

酷い言われようだ。俺は最初のうちは我慢していたが、この間違った情報は訂正すべきと思い、口にした。

「なにを言ってるんですか。白井さんはそんな人じゃありませんよ。黒田くんはジムのプログラムについてなら誰でも相談に乗ってくれますし、それに白井さんは真剣にダイエットに取り組んでいるんです。このジムにいらっしゃった当初よりもずいぶんとお痩せになった。それだけ努力家なんです」

いつのまにか熱が入り、声も荒くなっていた。

しまった。

んんんと喉を整わせてから、俺はなるべく冷静を保つことを心掛けてから言った。

「人の足を引っ張るような噂話はやめましょうよ。皆さんで応援し合いましょう。もちろん私も皆さんを応援するつもりでいます。そんな私が皆さんの悪口を言ったりしたら、どう思われますか?」

すると、3人の女性は恥ずかしそうに俯いてしまった。

「そんな……私たち、悪口を言っているわけじゃ……」

「ねえ?」

「すみません」

「いえ、わかっていただけたならそれで。お互いに正々堂々頑張りましょう」

そして、俺は更衣室へと向かった。腹わたは煮えくりかえっていたが、なんとか噂話を阻止できたと思う。けれど、やはりムカムカした気持ちはまだどこかでくすぶっていた。

驚いたのは俺自身。

スタッフの黒田くんと一緒の白井さんを見るだけで、モヤっとした気持ちになったからだ。

白井さんが楽しそうな笑顔を黒田くんに向けていた。

黒田くんも黒田くんだ。壁に押しつけて身体を密着(←解釈違い)だなんてセクハラまがいなことを。

「俺の苺大福が……」

いやもちろん、白井さんの苺大福は皆んなのものだ。そんなことは、わかりすぎるほどわかっている。白井さんの家族、白井さんの職場、白井さんの……彼氏。それ以上に、全人類の宝だ。

そんな大切な宝を、男好きだなんだと有ること無いこと貶されて、俺は猛烈に腹を立てている。

白井さんは良い人だ。素直で感情豊かで優しくて。

「はーーあぁ」

俺は、その場でしゃがみこんでしまうほど、ぐらりと揺れてしまっている。

自分自身の複雑な思い。これはいったいどういう感情なのだろう。

考えながら、目を覚まそうと冷水でシャワーを浴び、サウナで温まってから着替えを終え、俺は更衣室から出た。

すると。

そこで女性用更衣室から出てきた白井さんにかち合った。

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