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第67話:ラスト前の世間の評判

 最終選考の発表が終わり、二日経つ。

 強化合宿も終わり、アイフェスがあと数日でフィナーレを迎える。


「ふう……最終選考もあっとういう間だったな……」


 今日はアイフェス期間で最後の休養日。

 オレは最寄りの駅のファーストフードにきていた。


「おお! ライタ! こっちや!」


 ここにやって来た理由は、今回も金髪の友人ユウジに誘われたからだ。


「あっ、ユウジ。おはよう」


 学生はあと一週間ちょっと夏休み期間。

 ハンバーガー屋の二階席に移動して、最近の話をゆっくりとしていく。


「改めてライタ、最終選考通過、おめでとうさん!」


「ありがとう、ユウジ。こんなオレが通過したなんて、いまだに信じられないけどね」


 今回の緊急招集のメインは、オレがアイフェス最終選考を通過したことに関して。

 ジュースで乾杯して、プチ祝勝会をしてもらう。


「何を言っているんや? ライタは必ず合格する、ってワイも太鼓判を押していたやろ?」


「そういえば、そうだったかもね。とにかく今はほっとしているよ」



「最終選考の回も、かなり盛り上げていたからなー。一昨日の放送の反響も、ネット中でも盛り上がっているんやで?」


 アイフェスは収録日から突貫作業で編集。約二日遅れて、世間には番組としてネット配信される。

 最終選考の回は、一昨日に配信されたばかりの状況だ。


「そうか……最終選考の回も、放送されていたんだね。どんな感じなんだろう?」


 基本的に自分が関わった仕事の放送や情報を、オレは見ていない。最新回は未視聴だが、世間的の反応は今回ばかりは気になってしまう。


「世間の反応か? そうやなー、今んところは男子の中では、やっぱり春木田マシロたちがクローズアップされておったな?」


「やっぱり……そうなんだ」


 彼らはエンペラー系列の若手アイドルだけで構成されている。番組的にもクローズアップしやすいのだろう。


 ユウジの話によると、春木田マシロのグループが番組の半分以上を占め。番組の公式トップページも、彼らの集合写真が使われていたという。


「あと女子の中だと、エンペラー系の加賀美エリカと鈴原アヤネが、クローズアップされておったなー」


「エリカさんとアヤッチも……やっぱりそうか」


 二人もエンペラー・エンターテインメントの本系に所属している。そのため春木田マシロと同じようにクローズアップされやすいのだろう。


「まぁ、チー嬢やライタたちのグループは、“ぼちぼち”な扱いやったな」


「ぼちぼち……か。やっぱり、そうか」


 彼女たちに比べて、オレたちは外様で弱小な芸能事務職に所属。

 そのためスポンサーなど大人の事情も含めて、番組でも最低限だけしか扱われていないのだろう。


 でも関西人の“ぼちぼち”はどのくらいの規模なのだろう?


 あっ、そういえば、ユウジはエセ関西弁を話す、生粋の関東民だった。あまり気にしないでおこう。


「そういえば、ライタ。今年の最終日の生ライブは、グループはシャッフルしないで、そのままいくんやな?」


「うん、そうだね。オレは最終選考と同じ、ライタ組でステージに立つよ」


 例年のアイフェスは最終選考の後に、通過者中でもう一度最終シャッフルを行。最終日のステージに立つユニットを決めるのだ。


 だが今年だけはシャッフルを行わず、同じグループで進行。一昨日の番組の最後に公式発表されていた。


 つまりオレは相田シンスケたち熱血三人組と組んだ“ライタ組”として、最終日のステージに立つのだ。


 でも、どうして今年だけ、最終シャッフルが行われなかったのだろう? 前世でもこんなことは一度もなかったのに。


「ネットの噂だと、『ライタ組が原因』みたいやで?」


「えっ? オレたちが原因? どういうことだろう?」


「そりゃ、ライタたちが番狂わせで通過したから、急きょ予定を変えたんちゃうか?」


「あっ……そういうことか」


 エンペラー・エンターテインメントが主催するアイフェスでは、今まで『男性部門ではエンペラー系列以外の参加者が、最終選考を通過したこと』は一度もない。


 だが今回、外様グループなオレたちは最終選考を突破。

 そのため“大人の事情”が発動し、で最終シャッフルは行わないことに。

 春木田マシロ組を純粋なエンペラー系列組としたのだろう。


「そんなところやな。今んところは番組の方針も『春木田マシロ組推し』みたいな感じ。でも、これはやり過ぎやと思うで」



 ユウジが納得いかないのも無理はない。

 アイフェスはリアリティー系番組だが、編集の意図によって視聴者の印象は変わる。編集の力によって、今回ライタ組は“ついで”のような扱いになっているのだ。


「まぁ、オレたちは仕方がないよ。最終日のステージに立てるだけでも、オレは有り難いし。それよりも、オレ的には女性陣のシャッフルが凄すぎたんだけど!」


 女性陣は例年とおり最終シャッフルが発表されていた。

 最終日のステージに立つ二組は、

 ・鈴原アヤネを中心にしたグループ。

 ・大空チセ&加賀美エリカを中心にしたグループ。


 なんとチーちゃんとエリカさんが同じユニットになったのだ。


「凄すぎると思わない、ユウジ⁉ あのチーちゃんとエリカさんが同じ組になったんだよ!」


 女性陣は今までは互いにライバル視して、同じグループになっていない。


「胸熱すぎる展開で、最終日のライブが楽しみ過ぎるんだけど!」


 だが最終日のユニットは総合プロデューサーによって強制的に決定される。そのため夢のコラボが実現したのだ。


「チーちゃんとエリカさん……いったいどんなユニットになるのかな……」


 二人ともアイドルとしてのポテンシャルは高く、個性は違う。真逆にも近いアイドル同士なのだ。


 そんな彼女たちが同じユニットになったらどうなるか?

 考えただけでも興奮してしまう夢のコラボユニットに、アイドルオタクとして自分のこと以上に興奮していた。


「同じ参加者がそこまで興奮するのは、どうかと思うが……たしかに、あの二人が同じユニットになるのは、ネット民でも予想外やったな? でも、チー嬢にとっては大きなチャンスやで」


 弱小事務所な彼女は今まであまりクローズアップされてこなかった。

 だが加賀美エリカと同じユニットになったことで、今週からは扱いが急変するはず。もしかしたら一気に知名度がアップするかもしれないのだ。


「やっぱり、そうだよね! チーちゃんはアイドルパワーが凄いから、これで絶対に人気がでるよ、きっと!」


 大空チセがトップアイドルになる実力があることは、前世の歴史を知るオレの保証済み。


 あと、エリカさんとは“何かのライバル関係”にあるみたいだけど、仲は悪いようには見えない。

 きっと最終日のステージでは見事な化学反応を、彼女たちは見せてくれるはずだ。


「まったく、ライタは相変わらず呑気やなー。お前も最終選考を通過して、いちやく“時の人”なんやで?」


「えっ? “時の人”? そんなことないよ。ほら、周りを見てみて?」


 ファーストフードの店内の若い客で満席状態。だが今回も誰もオレに気が付いていない。


 今話題のアイフェスで、しかも最終通過者なのに、オレは誰にも認知されていない状態なのだ。


「たしかに、誰もライアに気が付いてないな? どういうことや?」


「ほら、オレって、ライタ組の中でも特に目立たないポジションだからじゃない」


 ちなみに相田シンスケたち三人から昨日きたメッセージによると、彼らはかなり世間的に認知された。

 一昨日の放送日の後に、何気なく街を歩いていたら、若い通行人からサインを求められたという。


 つまり同じライタ組の中でも、ポジションによって認知度が天と地の差があるのだ。


「そんなもんなのか? でも、そんな呑気なことで、ほんまにあの春木田マシロ組に勝てるんか?」


「えっ? オレたちがマシロくんたちに勝つ?」


 オレが春木田マシロに勝つことに、ユウジは期待していた。

 たしかにアイフェスはサバイバル・オーディション番組であり、最終日のステージにもバトル要素はある。


「前も言ったけど、そんなことは“無い”から」


 だが番組の絶対的な主役級である春木田マシロ組と、オレたちとでは戦う前から勝負は決まっていた。


「また、そんな無欲みたいなことを言って⁉ とにかくお前のことをワイは全力で応援しているからな! 最終日の生ライブも応援しておるからな!」


「うん、ありがとう。とりあえず頑張ってみるね。あっ、そろそろ時間だ」


 いつの間にか時間になっていた。ユウジと挨拶をして、プチ祝勝会は解散する。


 アイフェスは明日から、また通いの撮影のスケジュールとなる。

 最終日の生ライブに向けて、スタッフと参加者はともに最終仕上げに入っていくのだ。


(さてと。あと数日で生ライブか。なんか実感がないないけど、明日からも、頑張っていかないとな!)


 こうしてアイフェスは最終フェイズに突入するのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] やー、今回の話も最高でした!! ライタの世間の評判があまりなかったのは驚いたんですけど、これから「あの市川ライタってやばくない?」みたいな評価に変わっていくんだと思うと、ドキドキしてきました…
[一言] 相変わらず目標と行動が一致してない。もっと上を目指せるのにこの程度にしておこうとか必死にやってる他の子たちを馬鹿にしてるとしか思えないです。 1年で上り詰めると言ったのに何なのこれ?もっと必…
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