義高様はお人形?[1]
その日は、朝から姫はドキドキわくわく。
だって!だって今日は待ちに待った義高様との対面の日なんだもの。
今日まで、ずっとずっと考えていたの。
義高様はどんな方かな?
義高様は何が好きかしら?
義高様とどんなことして遊ぼう?
何をしたら一番楽しいかなって。
考えるたびにウキウキした気分になって、なんだか病気もつらくなくなるような気がしたのよ。
だって、今まで姫の周りには侍女しかいなくて。
初めてできる、お友達。
それも、とびっきりのお友達!
侍女達に毎日のようにすがって聞いた、昔語りに出てくる夢のような〝お婿さん〟。
す~っとず~っと姫と一緒にいて、姫と一緒に泣いて、笑って、悩んでくれる人。
うれしいな。
姫にお友達ができる。
姫に遊んでくれる人ができるんだもの。
姫はあんまり走ったりとかできないから、おいかけっこはできないけど、かくれんぼならできるかもしれない。
それがダメならお部屋で遊ぼう。
ひいな(人形)遊び(あそび)やいしなとり(お手玉)はやめよう。女の子の遊びだものね。きっと義高様はなさらないわ。
あ。でも、いしなとりなら、見てるだけでも面白いかもしれない。
姫の得意な遊び。
きっと驚くと思うの。
何たって、この前ついに、5つの玉を回すことに成功したんだから!
あと、双六をしよう。
うん。これなら、男の子もやるよね。
あと…あと、あと、あとは囲碁も…できる、かなぁ?
実は、姫はまだ侍女に習い始めたばかりで囲碁はあんまりうまくない。
義高様は、楽しんでくれるかなぁ?
ちょっと心配。
とにかく早くお会いしたいな、義高様に。
対面は夕刻ごろになるだろう、ってお父様はいってらした。
まだかなぁ、夕刻。
見れば、部屋から御簾ごしに見る日は、まだまだ高くて。
桜が焦る気持ちを抑えるように、まだかまだかと咲きかけていた。




