第2話 エバーヴェイルとヴァルキュリア
週末がきた。よし、書こう!というわけで、投稿です。
打ち上げでマナが話していたE&Sのイベントは、ファッションショーかと思っていたら、なんと浜名湖ダンジョンでのポロロッカフロッグ狩りだった。それも、ヴァルキュリアとの合同だ。どうやら、以前からE&Sからヴァルキュリアとのコラボの打診をしていたのだが調整が進まなかったらしい。しかし、この間のギルドイベントで発表したフレイヤのブランドとその背後でエバーヴェイルの傘下に入ったことでヴァルキュリアとのイベントが急に決まったそうだ。
しかし、なぜポロロッカフロッグか?だが、奴らは水着で倒すと悲哀のアクセサリという装備が手に入る。これを以前、エバーヴェイルの配信で公表した。しかし、その後、ケガをする探索者が多く出たそうだ。そこで、E&Sではひそかに戦える水着の開発を進めていたらしい。どうやら薄さと面積で防御力の判定があるらしいというのがE&Sが調べた結果分かったらしい。すごい執念だけど、ここだけじゃない? 水着で倒さないといけないのって…。
その結果生まれたのが戦闘水着らしい。計算しつくされた面積と防御を誇るらしい。まぁ、水着なので紙防御なのは変わらないようだが、どうやら破れにくく外れにくいという特徴があるそうだ。
そこに今回、本体の俺は小次郎の姿のまま、スタッフとして参加している。変装スキルが良い仕事をしてくれている。俺2号がフレイヤ、俺4号がメル、そして、マナと金子さん、そして辰巳さんが参加している。俺3号はクランベースで研究を続けている。
「今日はみなさんご参加有難うございます」
E&Sのチーフデザイナーの風間さんが挨拶をしている。実は探索者でもあるらしい。流石、探索者向けの服を出しているメーカーだけある。
ポロロッカフロッグの池の近くには、大がかりなテントが張ってあり、多くの男性スタッフ兼探索者が守りを固めている。
「エバーヴェイルさん、ヴァルキュリアさんも怪我無く、ポロロッカフロッグを狩っていただけるようご注意ください」
メルがいる限りケガをしたところで問題ないと思うし、あらかじめ支援魔法で防御を固めることもできる。
「今回着ていただいている水着は新製品となっています。防具の下に着けていただくことで、防具が燃えたり、酸に侵されたりしたときにすぐに脱ぐことができます」
なるほどね。以前、マナの鎧の金具が壊れて水着を着ていて助かったことがあったなと、真面目に考えるが、目の前の光景はヤバい。フレイヤ、メル、マナが水着なのはまだ慣れているが、ヴァルキュリアの女性探索者が15人もいるのだ。
「ヴァルキュリアのみんな、今日はエバーヴェイルさんの胸を借りて、しっかりとレベルあげとアイテムゲットして、戦力の底上げがんばりましょー」
リーダーの丸ノ内蝶子さんが武器の槍を振り上げる。胸を借りるとか言われると健全な男子として困る。
ちなみに、このヴァルキュリア。どうやら創始者がヴァルキュリアは近接武器が似合う!ということで近接武器に偏ったらしい。しかし、アイドルの側面もあるため、無理にモンスターに突撃するわけにもいかず、弱いモンスターでお茶を濁していると、結局強くならない。以前のマナのように、弱い敵を延々と狩ってもレベルはさほど上がっていかないのだ。
ところで、今回は配信をせずに録画となっている。変な輩が来ない時間帯を狙って狩りに来ているのだ。
「じゃあ、みんなに支援魔法と回復魔法をかけるの」
メルが全員に魔法をかけると驚きの声があがる。体が軽くなったと飛び跳ねているが、ほとんどがビキニ型の水着なわけで…。
「見るなとは言わんが、瞬きしてないぞ?」
金子さんが咳ばらいをしてくる。いやぁ、これは見逃しちゃだめでしょ…。
「警護に来てますからね。見張ってるんですよ」
俺の言葉に金子さんがため息をつく。
「まぁ、そういうことにしておくか」
辰巳さんは池の対岸にて見回りしているので近くにはいない。
「しかし、一昔前のテレビ番組じゃないか? 水着のおねーちゃん集めてワイワイ狩りをするとか」
確かに俺が小さいころにはそんな番組があった。深夜放送だったが、親の目を盗んでみたりもしていたわけだが…。
「E&Sさんは大真面目ですからね。売ることもそうですけど、素材もすごく研究しているらしいです。俺たちも別の目的はありますけどね」
そう、決して水着の女の子を眺めて楽しもうとか、そういうことはあまり、いや、多くは考えていない。女性探索者の生の声というのを聞いて、ダンジョン攻略に向けて必要なニーズを掴もうと思って来たのだ。マナはE&Sさんに負けないくらい真面目に取り組んでくれている。俺が、ダンジョン攻略を手助けするクランにしたいといったのを色々と考えてくれているのだ。
そこからは、フレイヤの補助もあったおかげで前衛たちに大きなケガもなく、ポロロッカフロッグを何体も倒しては、悲哀のアクセサリを獲得することができた。今回参加した探索者で分けることになっているが、人数分集まりそうな感じだ。しかし、防具も買えないくらいの食い詰めた冒険者への悲哀を込めたアクセサリだというのに、なんかここは華やかすぎて真逆の雰囲気だ。
そして狩りがひと段落したあと、ヴァルキュリアのスタッフと一緒になって飲み物を配っている。ヴァルキュリアのメンバーに配ると、リーダーの丸ノ内さんがお礼を言ってくれる。
「ありがとうございます。エバーヴェイルの関係者の方ですよね。今日はコラボしてくださってありがとうございました」
年のころは25歳くらいだろうか、リーダーの丸ノ内さんはバレーの選手を彷彿とさせるしなやかな肢体を持った美人さんだ。
「いえいえ、こちらこそ、E&Sはエバーヴェイルと業務でつながってますからね。協力いただいているのはこちらの方ですよ」
そういうと丸ノ内さんは、お互いWIN-WINで良かったですね!と屈託なく笑う。いやぁ、いつもはアイドルとしても活動していて歌や踊りもするらしいし、役得だなー。
「こじにー、鼻の下伸びてますよ?」
そんな俺にマナが話しかけてくる。
「いや、そんなことはないぞ」
そう、これくらいの刺激では動揺しない。アバターで女性の体にも慣れているわけで、そう、動揺しないはずだ。
「ふーん」
マナは信じていないようだ。
「こじにー?」
丸ノ内さんが首をかしげてくる。あざとい、あざとい! もっとやっていいですよ!
「あ、えーと、こじ…コージっていうんですよ。だから、あだ名がこじにーなんです」
せっかくごまかしてきた身元をばらすのも何なので、コージということにした。
「コージさんですか。よろしくお願いします」
丸ノ内さん、頭を下げると深い谷間が見えます。危険です。マナにまた何か言われそうなので、ちょっと仕事をしようかと思う。
「あの、今調査してることがありまして、ダンジョンに潜るときの困りごととかありませんか?」
「え? えーと、困りごとですか」
いきなり振られた話題に困惑されるかと思ったが、意外に真剣に考えてくれる丸ノ内さん。いい子だな。ぱっと表情が明るくなる。
「遠征ができなくて困ってます!」
そういうと細かく内容を教えてくれた。ヴァルキュリアは前衛に偏っているせいか、あまり当たりの強いモンスターとやりあうのは避けている。そして、ダンジョンには、適正モンスターというものが存在する。それは、戦い方のスタイルだったり、攻撃方法だったりするわけだ。自分たちの戦闘スタイルに合ったモンスターとがっつりと戦ってレベルをあげたいのだが、それがダンジョンの少し奥深くにいる場合、途中でキャンプを張ることになる。しかし、そのキャンプが大がかりになればなるほど経費がかさむ。さらに、女所帯ということもあり、戦闘の汚れやトイレの処理などキャンプに求める機能が増えてしまうのだ。もちろん、そんなことを気にせずに男性探索者は深層に潜っているわけだが、それをまねするのはアイドルを兼業している女性探索者には厳しいものがある。
「そういうことですね。たしかに、エバーヴェイルもあまり奥にはいかないな」
「そうですね。フレイヤが以前、名古屋ダンジョンの21層に行ったときに一泊してましたね。あ、そういえば、あの時、せい…いえ、なんでもないです」
フレイヤがいないところで、生理になって倒れてたみたいな話はできないな。でも、確かに思い出す。俺2号のドッペルゲンガーを解除した際に、フレイヤの記憶も吸収したが、あの時はつらかった。ずっと続く腹痛とか経験したことがないものだった。そこに来て、それに対する俺の対応ってば、本当にデリカシーが皆無だったな。あれは猛省している。ごめん、俺2号。
「そうなんですよね…。体調崩す子もこの人数だと多くて。割と周期があってきちゃうんですよね…」
なんか俺抜きで女子トークがはじまった。しかし、この問題は深刻だな。ダンジョンには基本的に階層間のわずかな場所に安全地帯があるだけで、安全に休息のとれる場所がほぼ無いのだ。
そんなわけで、生の肌…じゃなかった、生の声を聞くことができて、俺は次のアバターについてちょっと考えを巡らすのだった。
最近、おじさんばかり書いていたので・・・ついつい。




