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iDENTITY RAISOND’ETRE 第二部 ~聖櫃の行方~   作者: 来阿頼亜
第8章 神代継承のフィロソフィー?
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第二部 エピローグ

 人類とドラゴン族の間に歴史的な和解が成った────そのニュースは瞬く間に全銀河に広まった。

 ルキフ・ロフォはドラゴン族の長としての全権を実弟であるパイに譲ろうとしたが、パイはそれを頑なに拒否し、今もミリューさんのそばであくびをしているのだろう。

 レビさんはと言うと、至聖所の管理者から至聖宮の祭司へと任命され、各至聖所の統治をする重役を任される事となり、ルキフ・ルフォの片腕として忙しい日々を送っている。

 ケイさんはアインさんに興味を惹かれたそうで、彼に密着取材を申し入れたが、案の定頑なに拒否されていた。しかし、ケイさんの熱意……というか、しつこさに根負けしたアインさんが「命の保証はしない」という条件で動向を許されたという。その旅には実はもう一人の同行者がいた。

 ジェフさんは、自らをアンドロイドであると言ったグレイさんの言葉に衝撃を受け、自身の事をサイボーグだと言ったケイさんにその真意を確かめるため、また、自分自身が何者であるかを確かめるため、ミリューさんの下を離れ二人の旅に同行すると言いだしたのだ。

ミリューさんが快く送り出したのもカイルさん達がいればこそなのだろう。

 アンドロメダ銀河役所としてはフェイを逃した事は大きな失態だった。それはリックさんをはじめ、ブライアンさん、ポールさん、ルミさん、そして意外にも(失礼ながら)エミリーさんの表情からも窺い知れた。

 彼らが徹底マークしていたであろう人物をあと一歩のところまで追いつめながら逃してしまったのだ。その失望は計り知れない。だが、それは想定外の出来事があったのだから仕方の無い事にも思える。

 マスケレジーナを名乗る双子の裏切り、それはフェイが用意していたシナリオ通りだったのかもしれないが、僕達にとっては青天の霹靂である。彼らが僕らを、いや、シンさんを裏切る事は無いと思っていた。しかし、それは僕達の思い込みに過ぎない事であり、フェイにとっては想定していた出来事であり、僕達はまたしてもフェイの掌の上で踊らされていた事になる。帰りの機内でのレイアさんが憮然としているのも当然である。


「あ~も~、あったまくるわ!」

「まあまあ、落ち着いて下さいよ」

「今回の取材にしたって、別に収穫が無かったわけじゃない。ある意味スクープを取ったわけだから大手柄だ」


 シンさんと二人でどうにか宥めようとしたが、レイアさんの怒りの矛先はフェイに向けた物ではなかったようだ。


「アタシが頭に来てんのはベルカよ。あの女、結局アタシには何も言わずにさっさとどっか行っちゃったじゃない? そんで、アタシの事を妹だとか何とか言ってたのがさぁ、うやむやなままじゃない? 結局そこんトコがあいまいなままなのが、こう、なんつーか、ねぇ?」


 事実をはっきりさせたいレイアさんの性格上、わだかまりが残っている状態が気に入らないのだ。


「今度会った時は事実関係をハッキリさせてやるわ!」

「利害関係が一致している以上、そう遠くないうちに再会しそうだね……」

「うげぇ……」


 シンさんとクリスさんは金輪際ご勘弁、と言ったところだろうが、僕とレイアさんは彼らと違い、出来る事ならベルカさんとの早期の再会を願っていた。

 あの人には聞きたいことが山ほどある。それはベルカさんに限った事ではなく、ケイさんにもルキフ・ロフォにも聞きたい事はある。でも、一番聞きたい相手はフェイ────ではなく……




 あの人に、だ。



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