プロローグ ★挿絵あり
前作より半年が経過しております。前作をお読みになられると更に良いかも、と軽くアピール。
さんかく座銀河に属する惑星プシュケ。人類が16番目に発見し、開拓された惑星。
今回の取材地は意外と近かったとは言えど、例に漏れず定期シャトルのクソかったい座席に数日間の拘束は毎回嫌なものだ。いい加減、社用シャトルが欲すぃ……
てゆーか、シンのシャトルを使えばいいんじゃねーのって思った?
そりゃ、使えるモンなら使いたかったわ。
……オーバーホールになってなければ。
何でこーもタイミングが悪いのかしら。やっぱりアタシは呪われてるんだわ……
「レイアさん、今回の取材対象の『聖櫃』なんですけど……」
「ん? どーしたの、アスト?」
今や立派にパートナーを務めあげているアストの成長ぶりにアタシはそっと目を細める。
「いえ……確かコレって『不朽体』が眠る箱って言われているモノですよね? その、不朽体って言うのが聖人の遺体だって編集長が……ってゆーかミスターが言ってましたけど……それを取材する意味ってあるんですかね?」
少しはジャーナリストっぽくなってきたか? アタシの育成手腕も捨てたもんじゃないわね。
「そーなのよね……聖櫃って何だか仰々しい名前が付いてるけど、要は棺桶でしょ? 何でそんなモンを調べなきゃなんないのか……クリス、シン、分かる?」
カフェ・オ・レに口をつけて喉を潤し、前席に陣取る二人を頭上から覗きこむ。
「取り敢えず、至聖所に着いたら土下座しなさい」
そう言い放ちながら、アタシの素敵フェイスをパンフレットらしきもので叩く。
「ぶふっ! ちょ、何よクリス!?」
「アンタが聖櫃を棺桶呼ばわりするからよ! い~い? そもそも聖櫃とは、別名『契約の箱』とも呼ばれていて、アストっちが言った不朽体の他にも聖骸布や聖典などが納められている、神聖な物なのよ」
鼻をさすりながらパンフレットらしき印刷物に目をやると『至聖所観光館内ブック』の文字が飛び込んできた。
至聖所……先程クリスも言っていた言葉だが、記憶に引っ掛かる言葉だ。どこで聞いたっけなぁ。
「レイア……アンタ、学校でワタシと一緒に聖神学のコマ、取ってたわよね?」
「そんなの、とっくに忘れたわ」
ジト目でこちらに一瞥をくれるクリスの視線を華麗にスルー。
「相変わらずのスカポンタンね。ソレ見て勉強なさいっ!」
スルー出来なかった。
「ちなみにボクは既にインプット済みだ」
人差し指で自らのこめかみ辺りをトントンと叩きながら、クリスの隣に座るシンがこちらを見上げる。少しくらい頭が良いからって調子に乗んなよ!? レイア様の実力を見せてやろーじゃないの!
大体の実情は把握できた。
『至聖所とは、神々を奉る神殿などに於いて最も神聖な場所であり、一般的には最奥部の部屋がそれにあたる』
ま、ありがたい場所だって事は理解した。んで、ソコに保管されている聖櫃もありがたいモノだって事も理解した。
……で?
ソレが今回の取材対象なのだが、アストも言っていた通り、ソレを取材する事に何の意味があるのだろうか。いや、記事を書くための取材なのは解るわよ。だけど、それならばクリスとシンのチームだけで十分なハズ。
アタシ達の取材対象は『永久心臓』なのだ。
ミスターからもたらされた情報に疑いの目を向けるわけではないが、どうにも今回の取材には永久心臓は関係無さそうに思えてならない。こんな事なら、編集長の指示なんか無視してバカンスにでも行けば良かったかも。多分、有給休暇はたっぷりと残っているハズだし。
「クリス……悪いけどこの件、アタシ達は降りるわ。アタシ達の取材対象からは余りにもかけ離れてるもん。アタシ達は永久心臓の謎を追ってるんだし……」
さりげなくアストも道連れにしたのだが、文句は言わせない。隣で口をパクパクさせているが。
「あ、ちょっと待ってくれ。編集長からメールが来た……ミスターからの追加情報だ!」
アタシの言葉を遮り、シンがモバイルの画面をこちらに見せてくる。
「まだ話は終わってないってのに何よ……って、マヂか、これ!?」
「レイアさん、これは降りる事は出来ませんね」
思わずモバイルを奪い取り、顔を近づけたり遠ざけたり、あらゆる角度から見てみたが文面が変わる事はなく、そこにはただ一文……こう書かれていた。
『聖櫃の中に収められている聖人こそが永久心臓の祖なり』
やってくれるわね、ミスター。そんな事を言われちゃあ、ジャーナリストの血が騒ぐってもんじゃない? やってやろーじゃないのさ。
「アストッ! 前言撤回するわ。棺桶の謎、暴いてやろーじゃない!」
モバイルの画面を睨みつけながら、アタシは簡易テーブルの上に転がるナッツを一つ口へと放り込み、奥歯で噛み砕いた。
イラストはMひかる様よりの頂き物です。感謝感激でございますー!
随分前に頂いたものなのですが、最近やっとイラストの貼り方を覚えたもので……いや、お恥ずかしい……
やり方を教えて下さった本丸ゆう様、そして違う方法ですが同じく教えて下さった小野大介様、その節は大変お世話になりました。
あ、こちらも無断転載禁止でございます。




