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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第3章 縁の国・平定編(中編)

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第99話 やりたいこと

 災い転じて福となすということわざがある。それと絡めると語弊があるかも知れないが、金熊童子率いるオーガの大軍を撃退したから、竜次たちと甲冑職人善兵衛は出会えたとも言える。大災厄を切り抜けた後、天が与えた褒美と考えれば、ことわざ通りの意味で、そう間違いではないだろう。


「甲冑職人の里はここからずっと西、宵の国にほど近いところにあるんだが、ここまで来るのに苦労したぜ。それで来てみて一息ついて、さあ、連理の都までもうちょっと歩こうかと思いきや、大戦(おおいくさ)が始まりやがった。あんたたちが勝ってくれたから助かったけどな」


 愚痴にも聞こえるが、善兵衛なりの竜次たちへの礼も含めて話しているのだろう。彼は頭をかきつつ、照れくさそうである。職人らしいぶっきらぼうさと、人の良さが合わさった、善兵衛はそういう人間性を持っているようだ。


「なるほど、それは大分難儀だったのう。ところで今、連理の都に行きたいと言っておったな? 良ければ我らと一緒に来ぬか? すぐに都へ行けるぞ?」

「? あんたたちに都へ連れて行ってもらえば安全なのは分かるが、すぐに行けるってのはどういうことだい?」


 守綱は善兵衛がそう言うと思っていたらしく、得意そうに笑うと、赤珊瑚の飾りが映える、つば広の青帽子をかぶった仙を指し、


「聞いて驚くな。なんとあの御婦人は縮地の法術が使えるのだ! 瞬間移動の法術だぞ! 今まで聞いたことがあったか、善兵衛!」


 と、さらに笑顔を得意そうにして、大きな声で説明した。善兵衛はそれを聞き、多少呆気にとられた様子で、


「いや、もちろん見たことも聞いたこともねえなあ。あのべっぴんさんは、そんな凄い法術使いなのかい?」


 にわかにそう言われても信じられないという顔をしている。それはそうだろう。様々な法術が使える咲夜ですら、仙が非常に高度な法術、縮地を使えるとは、最初信じられなかった。法術とは縁遠そうな善兵衛なら、なおさらである。


「善兵衛さんと言ったよね。あんた連理の都でやりたいことがあるんだろう?」


 一連の会話を聞いて見かねたのか、仙が帽子を少し上げ、切れ長の目をした整った美しい顔を見せ、善兵衛に話しかけた。


「ああ、そりゃあるさ。俺は都で甲冑職人として一旗揚げたいんだ。そのために修行を重ねて、ここまで来たんだ」

「そうだろう。だったら連れて行ってあげるよ。そこのおっさんが言ってるように、私は縮地が使える。一瞬で都に着くよ」

「なんと! 今、おっさんと申したか! むむむ!」


 仙と善兵衛が話す中でドサクサに紛れ、少々からかわれた守綱はご立腹なようだ。

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