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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)

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第164話 慈悲の横顔

 星熊童子が莫大な妖力で放った鬼岩衝は大部分が相殺されたといえども、咲夜たち討伐軍に一定程度の損害を与えている。しかし、咲夜と仙が張った風の守護結界は、広い地下空間の上方から落ちてきた妖気の巨岩を砕き、それを巨(れき)以下の物に変えた。無数に散らばり落ちてきた(れき)をかわし切れない将兵も多かったが、被害は軽減され軍の態勢はまだ崩れていない。


(!?)


 後のことを考えず、星熊童子は捨て身でほとんどの妖力を使い切った。渾身の妖術を防がれ放心状態で、自分を親と慕い守ろうとするオーガたちと討伐軍の戦いを少しの間眺めていたが、(れき)(あられ)が無数に落ちる中、それを潜り抜けて来た2本の刃が青い女鬼に襲いかかる!


「シッ!!」

「ハッ!!」


 呼吸が荒く弱りきった星熊童子に、もはや、命を奪いに来た刃を防ぐ手段はない。竜次がズッシリとした踏み込みで放った縦斬りをかわし切れず、左足を断ち切られた星熊童子は、続いて飛んできたコギツネマルの正確無比な刃により、きれいな首を刎ねられた。胴体は力なく岩石質の地に落ち、星熊童子の斬り離された首は、驚きの表情のまま点々と地面を転がる。


「なぜこんなことに……」


 どこから間違ったのか。星熊童子はわずかに残された時間で、朦朧となっていく意識を感じながら考えていたが、すぐそこまで死が迫って来ている。もう考えるのを止め、全てを観念した星熊童子は、最期に美しい女の顔で静かに目を閉じ、やがて事切れた。


「あなたは、可哀想な女だったのかもしれないわね」


 安らかな美しい顔で死んだ星熊童子の首を手に取ったあやめは、厳かに手を合わせ、女鬼の体が青く大きな宝珠に変わるまで冥福を祈った。強敵の最期に祈るあやめの姿は、戦いから衆生を救う菩薩かと思うほどの現実離れした美しさで、傍にいる竜次はその神々しさに一歩も動けず、ただ黙って、あやめの慈悲深い横顔を見守っている。


 星熊童子の亡骸が大きな青玉に変わると同時に、広い地下空間に充満していた妖気と瘴気は全て消え、オーガ発生母体群の文様も全て枯れ果て機能を失った。残るは守綱と精兵たちが奮闘応戦しているオーガ軍だけであるが、親である星熊童子を失い、統制が全く無くなり大幅に弱体化している。咲夜以下の将兵たちは、残る力でオーガたちを全て難なく退治した。縁の国の姫、咲夜率いる討伐軍の勝利だ!




 激戦が終わり、鬼たちがいなくなった神秘的な地下空間に、竜次と咲夜たち将兵は佇んでいる。ついさっきまであった鬼たちとの激闘が、夢か幻のように思う錯覚を覚えたが、将兵たちは傷つき、中には命を落とした兵もいる。戦いは決して幻ではない現実である。それを認識し我に返った竜次は、星熊童子が最初にいた磨かれた広い床平面部に、ある奇妙な変化が起こっているのに気づいた。

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