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鬼斬り剣士の異世界平定記  作者: チャラン
第4章 縁の国・平定編(後編)

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第154話 陸に上る

 将兵たちの船が接岸した楕円形の島は、遠見からの外観以上に土地が広がっており、竜次たち500余名が上陸するのに空間的な余裕が十分あった。上陸部を一見すると、鬼が巣食う島であるとは思えないほどの静寂で、聞こえてくるのは寄せて返すさざ波の音ばかりだ。


「これが仁王島……本当に鬼たちがいる島なのかしら? 気配が感じられないけど」


 討伐軍の総大将である咲夜が若干(いぶか)しみ、辺りを三日月目でよく見回している。初秋の昼前の日差しが眩しい仁王島の砂浜は、見かけ上、安全に問題が見受けられず、コバルトブルーの海で海水浴が楽しめそうなほどである。


 先の結ケ原の合戦では、この島から金熊童子率いる図体の大きいオーガたちが総勢1000体、船を使って大陸に渡り、結の町を攻め取ろうとしてきたが、今は斥候の報告通りもぬけの殻となっているようだ。激戦を想像していた将兵たちにとっては拍子抜けだが、島を制圧するには絶好の条件が整っている。


「予想通りと言えば予想通りですが、それでも何が出てくるか分かりませぬな。慎重に態勢を取り、探索していきましょう」


 与一は油断無きよう将兵たちに呼びかけた後、仁王島上陸部から島中央の森林部に向けて、探索を進めるよう指示を出した。




 広葉樹の森の差し掛かりでは、夏虫と秋虫の鳴き声の入り混じりが聞こえてくるくらいで、特段の妖気は感じられなかった。しかしながら、森林の奥へ探索の手を進めていくと、


「あっ!? オーガだ! オーガがいるぞ!!」


 先行していた精兵の一人が3体のオーガを発見した! まさか、島に武器を持った人間たちが上陸していると思わず、全くの不意を突かれた形のレッドオーガ2体とブルーオーガ1体は、うつろな目に怯えをたたえ、既に恐慌を起こしている。


 甲種甲冑装備を身に着け、素早く駆けつけた竜次とあやめは、3体のオーガたちを確認するなり刀を抜き、呼吸を合わせたコンビネーションで、ものも言わずにオーガたちの首を全て刎ね飛ばした! 竜次とあやめはここに上陸するまでに、晴明が課した厳しい試練を成し遂げて来ている。レッドオーガ2体とブルーオーガ1体、それぞれを仕留めるのは、もはや紙を切るくらいに容易いことだ。


「ここでオーガたちが現れたということは、この辺りに何かあるかも知れませんね。詳しく探索を進めましょう」


 あやめはオーガたちの亡骸が宝珠に変化したのを見届けると、鬱蒼と茂る周囲の森林を見回し、冷静に今の安全を確認した後、咲夜たち以下の将兵にそう提案した。

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