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その32の1『デコレーションの話』

 学校が終わったあと、知恵ちゃんは桜ちゃんの家に遊びに来ていました。知恵ちゃんの他には誰も友達は来ていないので、珍しく知恵ちゃんと桜ちゃんの2人だけです。どうして2人だけなのかといえば、リビングでお茶をしているお母さん同士の都合でした。


 「知恵。なにかする?」

 「なにかあるの?」

 「なんでもあるよ」


 桜ちゃんの部屋は物が多く、たくさんの雑誌や小物が棚に並んでいます。知恵ちゃんや亜理紗ちゃんの部屋とは違い、小さいテレビも置かれていて、テレビにつないで遊ぶゲーム機もあります。そんな中、特に目立つピンク色の箱を発見し、その中身について知恵ちゃんは桜ちゃんに聞きました。


 「それ、なに?」

 「ジュエリーボックス。見る?」

 「見たい」


 箱の中は数段に分かれていて、キラキラしたアクセサリーが仕切られてキレイに並んでいます。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんの部屋にはないオシャレなものを見て、知恵ちゃんは触っていいのかダメなのかも解らずに怖気ています。


 「すごい。宝石だ」

 「オモチャだけど、つけてみる?」

 「う~ん……いい」

 「つけてみていい?」

 「いいよ」


 知恵ちゃん自身は恐れ多くてお断りするのですが、桜ちゃんの方が知恵ちゃんを飾り付けてみたい気持ちなので、それを断る理由がありません。ちょうちょの羽を模した髪留めを手に取り、桜ちゃんは知恵ちゃんの髪をすくい上げます。


 「知恵の髪……キレイだね」

 「お父さん似なんだ」

 「お父さん似なんだ……」


 キューティクルがお父さんの影響だと明かされつつも、桜ちゃんは知恵ちゃんの髪をまとめてアクセサリーで留めます。手鏡を渡して、自分で装着した具合を見てもらいます。


 「虫だ……」

 「ちょうちょはノーカンだから」


 知恵ちゃんは髪飾りをつけた自分よりも、ちょうちょの事が気になって仕方がありません。ちょうちょを外し、桜ちゃんは知恵ちゃんの髪を束ねて花の飾りがついた髪ゴムで留めます。いつもと違う髪型にされて、知恵ちゃんは顔を赤くしながら鏡を見ています。


 「変かも」

 「変じゃないと思うけど……」

 「今日、帰るまでつけてていい?」

 「いいよ」


 これは知恵ちゃんも気に入ったようで、帰るまで借りていることにしました。オシャレを終えた知恵ちゃんはジュエリーボックスをのぞきながら、ふと桜ちゃんに尋ねました。


 「桜ちゃんって、あんまり、こういうのつけないよね?」

 「ピンくらいは使うけど」

 「集めてるのに?」


 知恵ちゃんに言われ、今度は桜ちゃんが恥ずかしそうに自分の髪をいじっています。テーブルの近くに2人が向き合って座ると、桜ちゃんは言いだしにくそうに知恵ちゃんへと聞きました。


 「……私、リボンとかつけてみたいな」

 「つければいいのに」

 「……百合に笑われるかもしれないし」

 「……あぁ」


 桜ちゃんのお話を聞き、知恵ちゃんは百合ちゃんがリボンをかわいいと言っていたのを思い出しました。かといって、百合ちゃんや桜ちゃんがリボンをつけているのも見た試しがなく、知恵ちゃんは不思議そうに腕を組んで考え始めました。


 「なんで百合ちゃん、あんなにリボン好きなんだろう」

 「別に理由とかはないと思うけど……」

 「……女の子だからかな?」

 「知恵も女の子なのに……」


                                その32の2へ続く


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