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その30の2『おるすばんの話』

 亜理紗ちゃんに何が出たのかと聞かれ、知恵ちゃんは部屋の影にいた小人をまじまじと見つめます。目は黒くてクリクリしていて、全員が茶色い毛で覆われています。でも2本脚で立って歩いており、ボウシやベストのようなものを身につけていました。そこまで確かめたところで小人は逃げ出してしまった為、知恵ちゃんは総括して亜理紗ちゃんに連絡します。


 「たぬき!」

 『たぬき!ちーちゃんの家、たぬき出たの?』


 知恵ちゃんが追いかけようか迷っている間にも、犬のモモコがリビングのドアから出ていきました。しかし、たぬきの行方を見失ってしまったのか、知恵ちゃんがリビングを出るとモモコは戸の近くに留まっていました。


 「……」


 リビングから出た先は石を組んで作られた通路へと変わっていて、まるで城の中にでもいるみたいに空気がひんやりしています。その異質な世界に戸惑ったのか、犬のモモコはリビングへと戻り自分のベッドへと入っていきました。石壁にはりついている植物の根を知恵ちゃんが触っていると、通路の先にある階段に小人の姿を発見しました。


 「いた!」

 『なにが?』

 「たぬき!」


 知恵ちゃんの声に驚いたのか、たぬきの小人は階段を上らずに逃げていきます。追いかけた先には知恵ちゃんの家の玄関に似た場所があって、しかし壁や床はゴツゴツとした石で作られており面影はありません。壁の下の方に小さな穴が空いているのを発見し、そこからタヌキは逃げていったと知恵ちゃんは考えました。


 「アリサちゃん……私の家、どんなふうになってる?」

 『……どんなふうって?』

 「外からの見た目、変わってない?」

 『……』


 もはや距離的にはトランシーバーで通話できない場所まで離れているのですが、不思議と亜理紗ちゃんの声はノイズもなく通信できています。室内が異世界のものへと変わってしまったので、知恵ちゃんは家の外見を亜理紗ちゃんに尋ねました。


 『外からは何も……あっ』

 「……?」

 『ちーちゃんの部屋、何か光ってるんだけど』

 「なに?」

 『わかんないけど』


 それを聞いて、知恵ちゃんは通路を戻ると階段を上がっていきました。家の内装は変化していますが、構造は変わっていないので、いつも通り自分の部屋へ行く通路を進めば知恵ちゃんの部屋へと到着します。金属でできている扉をギィッと押し開くと、そこには黒い大理石模様の台座があり、その上には虹色の輝きを放つコインが鎮座していました。


 「……私の部屋に、謎のお宝がある」

 『どんな?』

 「大きい100玉みたいな」

 『100万円玉?』

 「なんなの……その聞いた事もないお金……」


 知恵ちゃんがコインを持ち上げようとしますが、それは台座に固くハメこまれていて知恵ちゃんの力では取れません。その時、下の階からキィーンと金属を打つ音が響いてきて、知恵ちゃんはトランシーバーを落としそうになりました。すぐにトランシーバーを耳元へ戻すと、亜理紗ちゃんから別の部屋の異変を知らされます。


 『ちーちゃん。ごはん食べる部屋、なんか光ってるけど』

 「なにが?」

 『……あ!たぬきだ!たぬきがいる!』

 「ええ……」


 自分の部屋にあるコインは置いておいて、知恵ちゃんはリビングへと急いで戻ります。扉を開いて中へ入ると、リビングも他の部屋と同様に石造りの部屋へと変わっており、そこにも知恵ちゃんの部屋の物と同じ台座がありした。ただ、そこにあるクボミにはコインが入っておりません。


 知恵ちゃんがキョロキョロとコインを探していると、台座の裏側で何かが動くのに気づきました。それは大ぜいのタヌキの小人たちで、5人の力をあわせて今まさにコインを運び出そうとしているところでした。


 「あ……」


 知恵ちゃんが見当たらないモモコに助けを求めようとしている内、タヌキたちはコインを持って隣の部屋へと逃げていってしまいます。リビングの隣にある小さな和室も、やはり城内のような変わり果てた部屋となっていて、タヌキたちは壁にあいている小さな穴の中へとコインを持ち去っていきました。


 「とられた……」

 『キラキラが?』

 「うん……」


 未だに事態を飲み込めていない知恵ちゃんが、呆然としつつ亜理紗ちゃんにつぶやきます。亜理紗ちゃんは家の中まで見えないものの、できる限りの冷静なアドバイスを知恵ちゃんへと送りました。


 『宝物って、ちーちゃんの家のものなの?』

 「ちがう……」

 『じゃあ、いいんじゃないの?』

 「確かに……」


                              その30の3へ続く


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