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その99の17『旅の話』

 金色のシカが特別オシャレな訳でも、不良な訳でもないことが解り、しばし知恵ちゃんと亜理紗ちゃんはシカの観察をしていました。シカは短いシッポを振りながら気ままに草原を歩き回っていて、居心地のいい場所を見つけては寝転がったり、草を口に含んでもぐもぐしていたりします。そこへ、バサバサという羽ばたきの音が聞こえてきました。


 「ちーちゃん。鳥さん来たよ」

 「わしかな?」

 「タカじゃないの?」


 鳥はシカより体が大きく、広げた羽は葉をたくさんつけた枝のようです。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんの家の近所では、カラスより大きな野生の鳥は見かけません。なので、大きな鳥なんてワシとタカくらいしか思いつきません。その鳥は桜色の羽を広げています。どう見ても日本にいる鳥には見えません。


 「……」


 鳥はシカの育てた花畑にクチバシを入れて、細かな金色の粒をついばんでいます。間近まで近づいて鳥の姿を見ると、ピンクの羽に白い毛が交じっていて、ふわふわと柔らかそうに揺れています。目は宝石をはめたように青く光り、クチバシはツルツルと光を跳ね返しています。


 「……」

 「アリサちゃん……どこ行くの?」


 鳥が羽を広げ、シカたちと仲良くたわむれています。それには構わず、亜理紗ちゃんは部屋をあらぬ方向へと動かしていきます。知恵ちゃんの疑問にはあえて応えず、斜めに生えている木を根本から上がって高い場所へと移動します。丁度、木の下には鳥がいます。それを見て、知恵ちゃんにも亜理紗ちゃんのやろうとしていることが理解できました。


 「乗るの?」

 「乗ってみる」


 窓の外にいる動物たちは、2人のいる部屋に気づいてはいません。部屋はせまいところにも入れますし、どんなに衝撃が襲ってきても窓ガラスすら割れません。ならば重さもないだろうと考え、高い所からストンと落ちるようにして、亜理紗ちゃんは窓から見えている視点を鳥の背中に乗せてみます。


 「……乗れた」

 「……飛んでくれるかな?」


 今、窓の外には鳥の後頭部が見えています。鳥は首を曲げたり、あちらこちらをキョロキョロと見回したりしています。でも、なかなか空へは飛び上がりません。もしや重くて飛べないのではないかと心配になってきます。そこへ、また別の鳥が空から現れました。


 「ちーちゃん……また鳥さん来たよ」

 「またピンクの鳥さんだ」

 

 大きなピンクの鳥が現れ、シカのツノにつかまって、知恵ちゃんたちの乗っている鳥を見ています。鳥の重さを支えながら、シカがプルプルと震えています。さらに鳥が3羽、空からやってきます。すると、知恵ちゃんたちの乗った鳥が、空へと向けて顔を上げました。


 「飛ぶかな?」


 バサバサと羽を動かし、部屋の窓に見えている景色が揺れます。飛び立つかと思われますが、まだ飛びません。そのまま羽をおさめます。重たげな鳥がツノに乗っているので、シカはプルプルしながら飛ぶのを待っています。どうして飛ばないのかと、知恵ちゃんは理由を考えています。


 「何か待ってるのかな?」

 「友達とか?」


 そんな2人の会話の中に、ざわざわと葉の揺れる音が入ってきます。鳥の羽ばたく音が聞こえてきます。次の瞬間、窓いっぱいに青い空が広がりました。


 「……飛んだ!アリサちゃん!」

 「……」

 「アリサちゃん……どうしたの?」

 

 亜理紗ちゃんは地図に指を押しつけたまま、難しい顔をして体をかためています。知恵ちゃんが何度か声をかけてみたところ、やっと亜理紗ちゃんは小さく、短く返事をしてみせました。


 「き……気をぬくと……」

 「……」

 「落ちる……」

 「……大変なんだ」


 亜理紗ちゃんが頑張ってバランスを取っていると知り、知恵ちゃんは話しかけずにそっとしておいてあげることにしました。


その99の18へ続く

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