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その99の6『旅の話』

 「アリサちゃん。お母さんが迎えに来たよ」

 「はーい」


 時計を見ると、もう時刻は5時を過ぎていました。知恵ちゃんのお母さんの呼びかけに応じて地図を閉じると、異世界を映していた窓が普段の街並みを取り戻します。家の前で待っているお母さんを窓からのぞき、亜理紗ちゃんはふろしきマントを背中から取って、知恵ちゃんと一緒に部屋を出ました。


 「アリサ。ふろしきは、何に使ったの?」

 「マントにしたけど、あんまりヒラヒラしなかった」

 「マントにしたの?」

 「ちーちゃん。また明日、来ていい?」

 「うん」 


 亜理紗ちゃんの持ってきたリンゴが迷惑じゃなかったかと気にして、亜理紗ちゃんのお母さんは顔を見せてくれたようです。また明日も遊びに来ると約束をとりつけて、亜理紗ちゃんはお母さんと共に帰っていきました。

 

 「知恵。なんか大きな声とか聞こえてたけど、アリサちゃんと何してたの?」

 「……旅みたいなこと」


 ボードゲームでもしていたのだろうというふうに笑って、お母さんはキッチンへと戻っていきました。知恵ちゃんは自分の部屋に行き、ベッドに乗っている折りたたまれた地図を手にします。地図は裏側の黒っぽい面が見える形で、キレイに二つ折りにされています。


 「……」


 試しに地図を広げてみます。窓の外には分厚く雪の積もった山が映り込みます。部屋のある場所を変えてしまうと、今日の旅の続きから再開できません。島の探検は明日の楽しみにとっておこうと考え、知恵ちゃんは地図をたたんで机の本棚へと差し込みました。


 ご飯を食べながら、お風呂に入りながら、知恵ちゃんは探検した島のことを考えていました。他に、どんな場所があるのか。どんな生き物がいるのか。あの島は、どこにある島なのか。ふとんに入った後も、それを頭に想い描くばかりでした。


 「ちーちゃん。おはよう」

 「おはよう」

 「あの紙、まだある?」

 「うん。部屋にある」


 島の探検を待ち遠しく思うようにして、亜理紗ちゃんも地図のことを話しています。学校へ着くまでの間も、2人は昨日のシカのような生き物や、雪山の宝石について思い出を交わしていました。


 「じゃあ、また学校が終わったらね」

 「うん」


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは学校へ到着し、それぞれ自分の教室へと入ります。登校してきた知恵ちゃんの姿を見つけて、桜ちゃんが手を振りながら声をかけています。


 「知恵。おはよう」

 「おはよう」


 昨日の旅が楽しかったので、亜理紗ちゃん以外の人にも島の様子を見せたいと思い、知恵ちゃんは桜ちゃんも島の探検に誘ってみることにしました。


 「桜ちゃん。今日、遊べる?」

 「あ……今日、おじいちゃんの家に行くんだ。早めに帰らないと。ごめんね」


 知恵ちゃんが友達を遊びに誘うのも珍しいので、桜ちゃんも今日ばかりはと都合が悪そうに謝っています。桜ちゃんは予定があるのが解ったので、隣にいた百合ちゃんにも声をかけてみました。


 「百合ちゃん。学校のあと、時間ある?」

 「私、おけいこがあるから……」


 百合ちゃんも習い事があると言います。ならば仕方がありません。また次の機会があれば声をかけようと知恵ちゃんは諦めました。そんな話をしているのが聞こえたのか、知恵ちゃんの席へと凛ちゃんがやってきます。


 「チエきち!私、今日はレストランに行くから遊べないわよ!」

 「聞いてないけど……」


 全員に断られてしまったので、今日も亜理紗ちゃんと2人で探検に行くことに決定しました。


その99の7へ続く

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