その98の4『かくれんぼの話』
「ほかの鳥さんも探そう」
「うん」
黄色いひよこは勉強机のスキマにはさまって落ち着き、自分からは動きそうにありません。そこで、ひとまず黄色いひよこは置いておいて、別の部屋に逃げてしまったひよこを探そうと亜理紗ちゃんは言います。
「電気、つけるね」
ろうかの電気を知恵ちゃんがつけ、2人は窓や壁にある小さな影の中まで、くまなく隅々まで探していきます。2階にはいなそうなので、階段を降りて1階に向かいます。洗面所に知恵ちゃんのお母さんがいて、2人が来たことに気づきました。
「アリサちゃん。もう帰るの?」
「ちょっと探し物をしてるんですけど」
「お母さん。ピンクのふわふわと、茶色のふわふわ知らない?」
「ピンクのふわふわ……これでいい?」
お母さんは洗面所のタナからピンクのタオルを取り出し、それを知恵ちゃんに手渡してくれます。たしかに、ふわふわしていて手触りもいいのですが、これではありません。もこもこのタオルをもてあそんでいる知恵ちゃんの横で、亜理紗ちゃんはリビングの戸が少し開いているのを見つけます。
「……あっちに行ったのかな?」
「お母さん。アリサちゃんとモモコと遊んでいい?」
「あっちはあんまり片付いてないけどいいよ」
お母さんに許可をもらって、2人はリビングルームに入りました。ひよこの行方を探して、部屋の中をきょろきょろと見回しています。
「もしかして……モモコちゃんに食べられた?」
「モモコは変なもの食べない……」
ちゃんとご飯ももらっているので、もらったおやつ以外はモモコは食べません。犬用ベッドで眠っているモモコへ近づいてみます。2人が来たのに気づいて、モモコも顔を上げます。
「あ……おこしちゃった」
起こしてしまったついで、亜理紗ちゃんはしゃがんでモモコをなでてみます。毛並みはボリュームがあってふわふわです。そうしてモモコとたわむれている中で亜理紗ちゃんは違和感をおぼえ、モモコのしっぽへと視線を向けました。
「……ちーちゃん。モモコちゃん……しっぽが2つあるんだけど」
「……ん?」
丸めた茶色いシッポをの横に、もう1つ茶色くて丸いものがあります。シッポが2つに増える訳もありません。知恵ちゃんはすくいとるようにして、茶色い毛玉を持ち上げました。
「ぴぴぴ……」
丸いものは、茶色いひよこでした。ひよこは知恵ちゃんに触られ、黄色いひよこと同じように死んだふりをしてとぼけています。知恵ちゃんが茶色いひよこを預かる係となり、亜理紗ちゃんは引き続きピンクのひよこを探していきます。
「……ちーちゃん。茶色いひよこさん、ちゃんと生きてる?」
「どきどきしてる」
死んだふりはしているものの、茶色いひよこは呼吸と共に少しだけ胸を上下させています。亜理紗ちゃんはピンクのひよこも早く探し出してあげようと頑張っていますが、リビングのどこにもピンクのふわふわは落ちていません。
「……なにか落としたの?」
洗面所で洗濯物したものをしまっていたお母さんが、リビングへと戻ってきました。亜理紗ちゃんがテーブルの下をのぞいているのを知って、落とし物でもしたのかと一緒にかがんで見ています。でも、テーブルの下にはゴミも落ちてはいません。
「知恵。それはなに?」
「茶色いもこもこ」
「……モモコの毛玉?」
「うん……そんな感じのもの」
お母さんに見つめられ、茶色いひよこのドキドキが強まります。あまりにドキドキしているので本当に死んでしまうのではないかと心配になり、知恵ちゃんの方が先にリビングから逃げ出しました。
その98の5へ続く






