その95の6『火山の話』
「ぎゃおぎゃお……」
黒い恐竜は溶岩を食べてお腹いっぱいです。満足そうに仰向けに寝転んだまま、ごろんと動かなくなってしまいます。ややふくらんだお腹が、呼吸と共にふかふかと動いています。
「たくさん食べて寝た……」
下で寝ている恐竜を知恵ちゃんがながめていると、また上からは羽ばたく音が聞こえてきます。新たに現れた恐竜は黒い恐竜と同じ姿をしていましたが、やや体の色は緑がかっていました。その足には何か、丸いものがにぎられています。
「ぎゃおぎゃお……ぐばぐば」
緑の恐竜は丸いものを横に置くと、口ですくいとるようにして溶岩を食べ始めました。こちらもまた、溶岩の熱で体が赤くなっていきます。緑の恐竜は熱さが苦手らしく、真っ赤になった体を冷やそうと、上に口を開けたまま食事を中断しています。
「ぎゃ……」
歯のない口をかぱっと開いて、恐竜が体の熱を放出しています。上にいる知恵ちゃんや亜理紗ちゃんと目をあわせ、恐竜は小さな目をパチパチさせていました。ただ、恐竜は人間に興味がないようで、体が緑色に戻ってくると、気を取り直して横に置いていた丸いものを持ち上げました。
「ぎゃぎゃ」
丸いものは緑色で、表面には水玉模様がついています。それがなんなのかと2人は観察していますが、すぐに恐竜は丸いものを溶岩に投げ入れてしまいました。丸いものは溶岩に浮かびますが、すぐに黒焦げになってしまいました。表面にヒビが入って、中から黄色いものがあふれてきました。
「ちーちゃん……あれなんだろう」
「……たまご?」
何かの卵のようですが、果物のようでもあります。あふれ出た黄色いとろみが熱されて、固まったものが溶岩に浮かんでいます。それを緑の恐竜は喜んで食べています。熱さが緩和されたためか、体が赤くなるのもゆっくりです。
「あ……ちーちゃん。また来た」
「……?」
バサバサと音がして、今度は3頭の恐竜が天井の穴から降りてきました。1頭は石の器を持ってきていて、それですくって溶岩を食べます。
「あれは、お上品恐竜だ」
「いろんな恐竜がいるんだ」
亜理紗ちゃんにお上品恐竜と名付けられた恐竜の他にも、別の恐竜は溶岩に頭を入れていましたし、持ってきた水を溶岩に入れている恐竜もいます。それぞれ好みがあるものだと興味深く、2人は食事風景を観察していました。
「ぎゃぎゃぎゃ」
「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
溶岩を食べた恐竜たちが、いっせいに鳴き声を発し始めました。ぐっと体を丸めると、その体からは勢いよく炎が噴き出しました。恐竜たちは炎の竜になって、その燃える翼で飛び立ちます。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
元気そうな声をあげて、恐竜たちはみんな天井の穴から外へと出ていってしまいました。すると、急に静かになり、溶岩のグツグツと煮だつ音が耳に届きます。その音をもっと楽しみたかった知恵ちゃんでしたが、手に持っている温度計の温度を見て、もう限界だとばかりに足を動かしました。
「あつい……アリサちゃん。そろそろ出よう」
「うん」
穴の中と比べれば、外の気温は涼しいものです。流れた汗の水分を取り戻そうと、2人はお財布の中をのぞきながら自動販売機の前に立ちました。あまりお金がないので、半分ずつお金を出してジュースを買おうか相談しています。
「……あっ」
もう秋なので、自動販売機のジュースも入れ替えが始まっています。自動販売機の一部には赤い文字で、あたたかいと書かれています。そこに入っているのは、トマトを煮込んだスープの缶です。赤くてドロドロ。どこか溶岩に似ているそれを指さして、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんに言いました。
「ちーちゃん。溶岩が売ってる……恐竜ごっこしたい」
「それは……買わない」
その96へ続く






