その68の3『箱の話』
知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは仕事をしている人のマネをして遊んでいましたが、オフィスで仕事をしている人など実際には見た事がなかったので、すぐにネタが切れてしまいました。亜理紗ちゃんはお菓子の箱をひっくり返したり、フタを開けたり閉めたりしながら、他の遊びにも使えないかと試行しています。
「……そうだ!箱の中身当てゲームしよう」
「なに?」
「箱の中身当てクイズ」
何か思いついた様子で亜理紗ちゃんは机へと向かい、知恵ちゃんは部屋から少し出ているように言われます。亜理紗ちゃんの部屋の前で1分ほど待っていると、小さくドアが開いて中へ入るようにうながされました。再び入室した知恵ちゃんは、テーブルをはさんで亜理紗ちゃんと向き合います。亜理紗ちゃんはフタを閉じたままのお菓子の箱を差し出して、何が入っているか当ててほしいと言いました。
「ちーちゃん。フタを開けないで、中身を当てて」
「解るかな……」
「重みとか、転がり方とかをヒントにして」
知恵ちゃんはお菓子の箱を揺らしてみます。箱自体には高さがない為、大きなものが入っているとは考えられません。箱を降ってみるとカラカラと音がし、中で何かが転がっていると解ります。亜理紗ちゃんの部屋にありそうなものを考えた末、知恵ちゃんは自信がなさそうに声を出しました。
「……サイコロ?」
「ちょっとちがう」
「ちがうんだ……」
「もっと小さい」
サイコロよりも小さいとなれば、あと思いつくものも限られてきます。でも、お菓子の箱をたてに横にと振っていると、中身は三角形のような気もしてきますし、平たいもののような気もしてきます。考えれば考える程、段々と疑心暗鬼になってきたので、知恵ちゃんは思い切って答えを出してみました。
「ネジ?」
「ちょっとちがう」
「これは難しい……開けていい?」
「いいよ」
降参宣言をして、知恵ちゃんはお菓子のフタを開きました。なのですが、中に入っていたのはサイコロで、答えはサイコロではないと亜理紗ちゃんは言っていました。知恵ちゃんは疑問の表情を亜理紗ちゃんに向けています。
「……サイコロ?」
「ええ?」
知恵ちゃんに箱の中を見せてもらって、亜理紗ちゃんも不思議そうにサイコロを取り出します。それが自分のサイコロなのか、亜理紗ちゃんはまじまじと検査しています。
「おかしいなぁ……」
「おかしいの?」
「サイコロは入れたはずないのに」
亜理紗ちゃんが入れたものは本当は別のもので、サイコロを入れたおぼえはありませんでした。半透明なサイコロは確かに亜理紗ちゃんの持ち物で、机の引き出しに入れてあったはずのサイコロもなくなっています。
「……ちーちゃん。箱、あけてみて」
「うん」
亜理紗ちゃんはサイコロを机の中へと戻し、知恵ちゃんにお菓子の箱をあけてみるよう告げます。すると、なぜか箱の中にはサイコロが戻って来ていて、机にしまったサイコロは移動してなくなっています。どういった流れでサイコロが移動しているのか、亜理紗ちゃんにも徐々に解ってきました。
「そっか。机と箱がつながったんだ」
何度やっても、サイコロは箱に戻ってきます。そうしている内、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんが本当に箱に入れたものの方が気になり、それはどこへ行ったのかと尋ねました。
「アリサちゃんは、ほんとうは何を入れたの?」
「ほんとうは、それ」
亜理紗ちゃんが指さしたのは、机の上に置いてある小石です。オシャレな小物などではなく、それは道脇に普通に落ちているような石です。そんな正解しにくいものが箱に入っていたと知り、知恵ちゃんは小さくつぶやきました。
「小石って……」
その68の4へ続く






