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その11の3『怪獣ごっこの話』

 今日は天気がハッキリとせず、雨は降らないながらも雲が立ち込めています。授業の合間、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんの真似をして教科書にアリサウルスの落書きをしてみました。でも、亜理紗ちゃんの描いていたキャラクターは簡単な形をしているに関わらず、なかなか似た雰囲気になりません。

 

 「知恵ちゃん。なに描いてるの?」

 「モモコだよ」

 

 休み時間になって、同じクラスの百合ちゃんが知恵ちゃんの席へ遊びに来ました。アリサウルスを描いていると百合ちゃんに言っても伝わらないので、知恵ちゃんは家で飼っている犬の名前を出しましたが、それはどう見てもモモコではありません。百合ちゃんは遠慮なく、見たままの感想を口に出しました。


 「かわいくないからリボンつけよう」

 「モモコはリボンはつけてないけど」

 「でも、リボンをつけたら可愛いよ~」


 その後、落書き大会に桜ちゃんも加わって色々な要素が付け足されていった結果、知恵ちゃんが描いていたものはアリサウルスでもモモコでもなく、リボンをつけた猫のキャラクターに変わっていました。


 放課後になり、いつものように亜理紗ちゃんが知恵ちゃんを迎えに来ます。学校の友達と校門前で別れると、知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは一緒に家へ帰りました。しかし、家の前まで来ると、また昨日と同じ様子で亜理紗ちゃんは家に入っていってしまいます。

 

 「ちーちゃん。今日もアリサウルス見てね」

 「何か変わるの?」

 「ちょっと変わる」


 知恵ちゃんは家に入り、廊下から亜理紗ちゃんの家の窓を見つめます。そこには昨日の夜と同じく、ぬいぐるみと毛玉が置いてあります。そこへ亜理紗ちゃんがやってきて、ぬいぐるみではなく毛玉だけを持って立ち去りました。


 「知恵。宿題は?」

 「今日はないよ」

 「へぇ。ラッキーだね」


 お母さんに宿題のことを聞かれますが、今日は宿題が一つもない日でした。そういう日は亜理紗ちゃんと遊びに出かけることが多い知恵ちゃんでしたが、今日は何もせずにニュースの番組をながめていました。


 午後5時を過ぎると、ニュース番組はグルメ特集に変わっていて、台所では知恵ちゃんのお母さんが何かを炒めている音が聞こえています。部屋は暖かくも寒くもなく、少しだけ食べたクッキーが知恵ちゃんの心を温めます。いつの間にか、知恵ちゃんはソファに座ったまま、うとうとと眠ってしまいました。


 気がつくと、知恵ちゃんは石のような質感の場所に寝転んでいました。空は青く、雲は近く、手を伸ばせば届きそうです。知恵ちゃんが体を起こすと、木々のてっぺんをかすめるように深い緑の景色が目の前に広がりました。そして、知恵ちゃんが座っている地面は、まるで片足で立っているかのように、ふわふわと不規則に揺れていました。


 「……知恵?」

 「……」

 「知恵?ごはんよ」

 「……う……んん?」


 お母さんの声が聞こえ、知恵ちゃんは自分がソファの上で目を覚ましました。もうお父さんも家に帰ってきていて、食器も料理も食卓に並んでいます。


 「今、寝ると、夜に寝れないよ?何か飲む?」

 「……うん」


 そう言って、お父さんはコップにお茶をついでいます。今日の夕ご飯はナスの漬物と、青菜の味噌汁と、ポテトのサラダ。それと、お皿に乗り切らないほどの、とても大きな魚の煮つけでした。



                                  その11の4へ続く


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