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その58の5『予言の話』

 テストの件は亜理紗ちゃんが一方的に不甲斐なかったので、どちらも2ポイントずつもらえる結果として双方が納得しました。亜理紗ちゃんは一問だけ不正解となったプリントを見て、人生において大切なものをさとります。


 「ちーちゃん。簡単そうでも、油断したらダメ。それが一番、大事」

 「うん」


 プリントの見せ合いっこによって本日の予言は終了し、どちらも2ポイントで同点となりました。次の日の朝、また亜理紗ちゃんは予言について確認します。


 「今日、ちーちゃんの家の夜ご飯がカレーだったら、私が2ポイントね」

 「アリサちゃんの体育がナワトビだったら、私が2ポイント」


 最近は体育の授業でナワトビをすることが多いので、今日の授業もナワトビだろうと考え、知恵ちゃんは2日目の予言を決めました。でも、それよりまず亜理紗ちゃんへは伝えておかなければならない事実があります。


 「うち、昨日の夜がカレーだったから、きっと今日はカレーじゃないと思うの」

 「えっ!」


 晩ご飯がハンバーグだった日、知恵ちゃんがカレーの話をしていたので、お母さんは翌日の晩ご飯をカレーにしてくれたのでした。晩ご飯が連続で同じメニューである可能性は少ないので、この時点で亜理紗ちゃんの予言はあたりそうにありません。


 「……」


 カレーの件を聞いてしまい、亜理紗ちゃんは希望を失ったように無気力な足取りで登校していました。今日も雲は空を埋め尽くすほどたちこめており、亜理紗ちゃんは目立つ大きな傘を揺らしていました。


 その日の放課後、朝とは一転して元気になった亜理紗ちゃんが、知恵ちゃんを教室の前まで迎えに来ました。


 「今日は体育、とび箱だった!」

 「そうなんだ」

 「今日は私たち、0ポイントだね」

 「なんでうれしそうなの……」


 また今日も、雨の中を2人で帰ります。亜理紗ちゃんがお母さんと買い物へ行くというので、今日は遊ぶ約束はせずに知恵ちゃんも家へと帰りました。夜になって知恵ちゃんのお父さんが帰宅すると、リビングのテーブルには食事が並び始めました。


 「まだカレーあるんだっけ?」

 「冷凍庫にあるよ」


 ふと、そんな会話がお父さんとお母さんの間でかわされました。お父さんは冷凍庫からカレーを取り出し、電子レンジで解凍していきます。もう食べ終わったと思っていたカレーが残っていて、それをお父さんが晩ご飯に用意します。すると、知恵ちゃんの家の晩ご飯はカレーということになってしまいます。


 次の日、晩ご飯がカレーだったことを亜理紗ちゃんに伝えます。亜理紗ちゃんは驚きながらも、カレーを何日もかけて食べる話には納得の仕草を見せます。


 「でも、カレー。うちのお母さんも冷凍してる」

 「カレーって凍るんだ……私、知らなかった」


 それ以降も毎日、亜理紗ちゃんの書いた予言は不思議と当たり、知恵ちゃんの予言は1つとして的中しません。予言ごっこの6日目ともなると、亜理紗ちゃんの予言は『時計の電池がなくなる』などという珍しいものだったにも関わらず、その日に限って知恵ちゃんの教室の時計は電池が切れて止まるほどの始末でした。


 「……」


 ついに予言ごっこは7日目になりました。知恵ちゃんの書いた予言は『雨が降る』という内容でしたが、今日の天気は青一色です。亜理紗ちゃんの方は合計ポイントで勝っているので、どうにかして知恵ちゃんが勝てるように調整しています。


 「今日、雨が降ったら、ちーちゃん100ポイントでいいよ」

 「いいの?」

 「うん」


 それからというもの、朝に会ってから放課後になるまで、知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと目を見て話をしません。できるだけ差しさわりなく、物静かに一日を過ごしていきます。学校から帰って家の前へと到着したところで、亜理紗ちゃんは手をパッと叩いて知恵ちゃんに言いました。


 「予言ごっこ終わり」

 「……?」

 「雨も降ってないから、私の勝ち」


 亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは、本当に雨が降っていないのか、最後に空を見上げました。その後、かわいた空から視線を戻します。知恵ちゃんの目が少しうるんでいて、亜理紗ちゃんはポケットの中のハンカチを探します。でも、今日はハンカチを持っていなかったので、代わりにポケットティッシュを差し出しました。


 「……ありがとう」

 「ごめんね」

 「ううん」


 知恵ちゃんはティッシュを1枚だけもらって、軽く目元をふきます。そして、知恵ちゃんもハンカチを取り出して、ちょっとだけ降った雨をぬぐってあげました。


 「……ちーちゃん。ずっと友達でいてね」

 「うん」


                                 その59へ続く



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