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その55の4『秘密結社の話』

 「ちーちゃん。これでいい?」

 「いいんじゃないかな」


 亜理紗ちゃんはヨロイのカブトらしきものと、ボロの布切れをガラクタ置き場から見つけ出します。互いに見合ったままジリジリと足をすくませている黒い生き物の元へと戻り、それらを頭に被せてあげます。すると、黒い生き物たちは何事もなかったかのようにして再び走り出しました。


 「オシャレをしたら、元気になったの」

 「オシャレ星人だ……」


 亜理紗ちゃんはオシャレで元気になったと思っていますが、知恵ちゃんは顔を見合わせるのが恥ずかしかったのだろうと察しました。知恵ちゃんと亜理紗ちゃんも顔をかくしているので、もう黒い生き物たちは緊張を向けてはきません。2人は変装したまま、空のティッシュ箱を持った黒い生き物のあとを追っていきます。


 「……?」


 通路の奥には、また広い部屋がありました。部屋の中央は高くなっており、そこへのぼるための階段があります。様々なものを頭に乗せた黒い生き物たちが列をなしていて、ティッシュ箱を頭にかぶった生き物も列の最後尾へと並びつきました。


 「……ちーちゃん。高い所になにかいるけど」

 「……?」


 部屋の真ん中、高くなっている場所には金色に輝く何かがおり、亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは階段に足をかけて様子をうかがいます。そこにいる生き物は形こそ黒い生き物たちと同じですが、キラキラと金色に光る体をしています。


 「あれ、きっとボスだ。秘密結社の」

 「ボスなの?」


 亜理紗ちゃんに言われてみると、金色の体をした生き物は玉座に座っており、どこか偉い雰囲気をかもし出しています。黒い生き物たちは被り物を頭に乗せたまま階段に並んでいて、最前列にいる黒い生き物は頭に乗せていたワカメらしきものを献上しました。


 「あ……プレゼントするんだ」

 「あれは、いやがらせじゃないの……?」


 ワカメはぬれているらしく、それを頭に乗せられている様子だけ見て、知恵ちゃんは嫌がらせなのではないかと疑惑を向けています。でも、ワカメを乗せられてもボスは怒りません。ワカメをあげて素顔になってしまった黒い生き物は、柱の裏にかくれてしまいます。今度はメガネのようなものをつけた黒い生き物たちがボスの周囲を取り囲み、ワカメをかぶったボスの姿を評価していきます。


 「……ピピッ!」

 

 メガネをかけた生き物が短く声を発すると、ボスは黒い生き物へとワカメを返しました。順番に待っていた次の黒い生き物も、頭に被っているものをボスの頭に乗せます。その一連の様子を見て、亜理紗ちゃんは行動の意味を憶測で述べました。


 「……ボスに似合うのを探してるんじゃないの?」

 「わかめは似合わなかったんだ……」


 次に黒い生き物が持ってきたのは黒い仮面です。それをボスに被せると、また素顔になった生き物は身をかくしてしまいます。すぐに審査が開始され、黒い生き物たちは4人がかりでボスの姿を見ていきます。


 「……ピッ!」


 またしても不採用だったようで、ボスは仮面を黒い生き物へと返します。同じようにして次、その次と審査は続いていきますが、どれも採用とはなりません。その内、ティッシュ箱を被った黒い生き物の番がやってきました。


 「うちのティッシュの番だ」

 「どうなるかな……」

 「私のティッシュが選ばれたら、ちょっとうれしい」


 ティッシュの箱は盗まれた物なのですが、それはともかく亜理紗ちゃんはティッシュ箱がボスに選ばれるのを期待しています。亜理紗ちゃんの家のティッシュ箱には花の柄が印刷されていて、メガネをかけた生き物たちも、物珍しそうに時間をかけて見つめていました。


 「……」


 審査の動きが止まります。その合否が自分たちには全く関係ないにも関わらず、知恵ちゃんも亜理紗ちゃんも思わず息をのみます。


 「……ピッ!」


 ティッシュ箱は黒い生き物に返されてしまいました。それを被りなおすと黒い生き物は階段をくだって、亜理紗ちゃんたちの横を通り過ぎていきます。

 

 「ダメだった……」


 ティッシュ箱を却下されたショックで、亜理紗ちゃんは階段に腰を下ろしてしまいます。次の黒い生き物は頭に木の板を乗せていて、それをボスへと渡しています。


 「ちーちゃん。あれ、どう?」

 「う~ん……」


 木の板を頭に乗せたボスの周りを、審査員たちがグルグルと回っています。しばらくすると、今まで聞いたことのない声が発せられました。


 「ピッピピ!」

 「ピッピピ!」

 「ピッピピ!」


 審査員の号令を受けて、列に並んでいた黒い生き物たちもボスを取り囲みます。そして、ダンスをおどるように足を動かしながら、みんなで大騒ぎを始めました。


 「アリサちゃん……あれ、もしかして」

 「……」


 木の板がボスの装飾として選ばれました。その事実を受け、亜理紗ちゃんは何か思うようにして目を細めています。改めて見てみても、ボスの頭に乗っているものはボロボロの木の板です。人間の視点で比べれば、ティッシュ箱の方がオシャレに見えます。


 「ちーちゃん……」

 「……?」

 「……私のティッシュ、木の板に負けたんだけど」

 「……どんまい」


 やや落ち込んだ様子の亜理紗ちゃんの背中をさすりながら、とぼとぼと知恵ちゃんは亜理紗ちゃんを部屋へ連れて帰りました。


                                  その56へ続く

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