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その46の4『終わらない話』

 土曜日と日曜日は知恵ちゃんも亜理紗ちゃんも家の用事があり、2人で遊ぶ時間がありませんでした。なので、次に知恵ちゃんと亜理紗ちゃんが会ったのは月曜日です。学校からの帰り道、亜理紗ちゃんは前に遊んだ灰色の壁のことを思い出します。


 「もしかして、今日も出てくるかな。ねんどの壁」 

 「どうだろう」


 帰宅後、亜理紗ちゃんが知恵ちゃんの部屋へと遊びに来ます。しばらくは2人でマッサージごっこをしていたのですが、ふと気がつくと知恵ちゃんの部屋の壁の色が変わっています。そこにあったのは先週の金曜日に見た灰色の壁で、前に作ったくぼみはなくなって真っ平に戻っていました。


 「ちーちゃん!壁だ!」

 「ほんとだ……」


 亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの背中のつぼを押しながら、灰色の壁を指さしています。背中のつぼを押されて効きながらも、知恵ちゃんも顔を上げて壁を見つめます。また壁に色々なものを押しつけて遊ぼうと、亜理紗ちゃんは自分の家にものを取りに帰ります。


 「ちょっと、家から物を持ってくるね」

 「うん」


 15分ほどして、亜理紗ちゃんは知恵ちゃんの部屋へと戻ってきます。手にしているエコバックの中にはオモチャや文房具、木彫りの置物やクリスマスツリーの飾りなどもありました。それを1つずつ取り出し、また知恵ちゃんと2人で壁に押しつけて遊びます。


 「アリサちゃん。楽しい?」

 「うん」


 その日も、ひたすら亜理紗ちゃんは壁にくぼみを作って遊んでいて、1時間ほどすると知恵ちゃんはベッドに座ってながめていました。夕方近くになり、くぼみでいっぱいになった灰色の壁は、前と同じように透けて消えていきます。


 「アリサちゃん。お母さんが、帰ってきてって言ってたよ」

 「はい。じゃあ、ちーちゃん。またね」

 「うん」


 知恵ちゃんのお母さんに呼ばれ、亜理紗ちゃんはエコバックを持って家に帰ります。次の日も、亜理紗ちゃんが遊びに来ると、知恵ちゃんの部屋に灰色の壁が現れました。また知恵ちゃんと亜理紗ちゃんは壁にくぼみを作って遊びます。


 「アリサちゃん。楽しい?」

 「うん」


 また次の日、同じように灰色の壁で遊びます。今日はお菓子のおまけについてきたオモチャを持ってきて、それを様々な角度で壁に押しつけてみます。


 「アリサちゃん。楽しい?」

 「うん」


 水曜日も、知恵ちゃんの部屋には灰色の壁が現れました。軍手やビニールの手袋を使って、今日は手形をつけて遊んでみます。


 「アリサちゃん。楽しい?」

 「うん」


 木曜日です。今日も同じように、灰色の壁で遊びます。


 「アリサちゃん。楽しい?」

 「楽しい」


 金曜日です。また、亜理紗ちゃんが遊びに来くると、知恵ちゃんの部屋には灰色の壁が出現しました。亜理紗ちゃんは昨日とは別のものを持ってきて、壁に押しつけて遊びます。今日は知恵ちゃんは、後ろで亜理紗ちゃんの姿を見つめています。


 「アリサちゃん。楽しい?」

 「楽しいよ」

 「アリサちゃん。ちょっといい?」

 「ん?」


 一週間、ほぼ同じ遊びをしていても一向に飽きる様子のない亜理紗ちゃんをベッドに座らせ、知恵ちゃんは小さく口を開いて言い出しにくそうに伝えます。


 「……紫の石、貸してあげようか?」

 「なんで?」

 「そうしたら、うちに来なくても、あれで遊べるかもしれないし」

 「……あ、そっか」


 知恵ちゃんは亜理紗ちゃんと遊ぶのは楽しいですが、さすがに灰色の壁で遊ぶのには疲れてしまいました。2人は紫色の石を見つめます。でも、亜理紗ちゃんは石を借りるのをやめました。


 「いいや」

 「どうして?」

 「だって、ちーちゃんとじゃないと、面白くないし」

 「……そっか」


 その後、亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは灰色の壁が消えるまで、2人で一緒に遊びました。次の日も亜理紗ちゃんは部屋に遊びに来ましたが、灰色の壁は現れませんでした。次第に、亜理紗ちゃんも灰色の壁のことは口にしなくなりました。


 「……」

 「アリサちゃん。今日、なにする?」


 しばらく経ったある日、また亜理紗ちゃんは知恵ちゃんと何をするか考えていました。一緒にお絵かきをしてもいいですし、オモチャで遊ぶこともできます。ゲームもあります。そうして知恵ちゃんと何をしようか悩んでいると、ふと知恵ちゃんは何を見つけて壁を指さしました。


 「アリサちゃん……あれ」

 「……あ」


                               その47へ続く


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