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その38の1『水槽の話』

 「知恵。今日は雨が降るらしいから、傘もっていきなさい」

 「うん」


 登校前、天気予報を見ていた知恵ちゃんのお母さんが、知恵ちゃんに傘を持って行くよう言いました。窓の外の空には雲が色濃く広がっており、朝だというのに夕方と勘違いする程に暗くなっていました。亜理紗ちゃんが家に迎えに来ると、知恵ちゃんはお気に入りの傘を持って、長くつをはいて家を出ました。


 「ちーちゃん。今日、やっぱり雨なの?」

 「そうらしいけど」


 今は雨が降ってはいませんが、テレビの降水確率は80パーセントです。まず間違いなく雨が降ると判断し、亜理紗ちゃんも知恵ちゃんと同じく傘を持っていました。知恵ちゃんの傘には名前の書いたシールが2つも貼られていて、他の人が間違えて持って行ってしまう心配もありません。


 登校の最中にも少しずつ雨が降り始め、2人が学校に着いた時には水たまりがはねる程の雨となっていました。亜理紗ちゃんと知恵ちゃんは、あまり傘を濡らさずに学校へと到着しましたが、長くつの底は水たまりを踏んでツルツルになっています。長くつは下駄箱に入らないので、上の方を折りたたんで丁寧に押し込まれます。


 「すごい雨だ。ちーちゃんのクラス、体育ある?」

 「今日はないからよかった」

 「こっちは体育館でやると思う」


 教室の前で亜理紗ちゃんと別れ、知恵ちゃんは自分の机にランドセルを置きました。窓には滝のように雨が流れており、物珍しそうに見つめている生徒が何人もいます。知恵ちゃんが来たのに気づき、誰より先に凛ちゃんが声をかけます。


 「チエきち!ぬれなかった?」

 「大丈夫だけど」

 「そう!じゃあ、いいけど!」


 そう聞いている凛ちゃんの方が少しだけ髪をしっとりさせてており、ハンカチタオルを頭の上に乗せて水気を吸い取っていました。窓際にあるヒーターは熱が通っていて、塗れた生徒たちが暖をとっています。


 「……おはよう。知恵」

 「おはよう」

 「おはよう~」


 知恵ちゃんに遅れて、桜ちゃんと百合ちゃんが教室へやってきました。2人はランドセルに水玉がついているくらいで、そこまで濡れてはおりません。窓の外を指さして、百合ちゃんが知恵ちゃんに雨の話題を持ち掛けます。


 「急に降ってきたね~。知恵ちゃんは大丈夫だった?」

 「あんまりぬれなかった」

 「さっきより強くなってるよね。さすがに暗い……電気つけよう」


 あまりの暗さに桜ちゃんが教室の電気をつけ、その光を受けて窓の外の雨がピカピカと輝きます。それにあわせて雷の光が窓をおおい、遅れてゴロゴロと音が聞こえてきます。クラスのみんなは雷を怖がるような素振りはなく、むしろ少し面白がるようにして空を見上げていました。百合ちゃんだけは雷の閃光を受けて、イヤそうにまゆを寄せています。


 「ビックリした~」

 「え?本当にビックリしてるの?」

 「ビックリしたよ~」


 顔をしかめているものの、百合ちゃんの声は普段通りの穏やかなものであり、桜ちゃんは本当にビックリしたのかと半信半疑です。そんな桜ちゃんを見て、知恵ちゃんも桜ちゃんにビックリしているのかと問いかけます。


 「桜ちゃん……ビックリしたの?」

 「ん?なんで」

 「髪がビックリしてる」


 桜ちゃんはガラス窓に顔を映してみます。その髪は湿気のせいでうねるように広がっており、まるで髪が雷にビックリしたようになっています。はねた髪を恥ずかしそうに押さえながら、桜ちゃんは知恵ちゃんに笑って見せていました。


                             その38の2へ続く

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