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【書籍化改題】身代わり令嬢の余生は楽しい ~どうやら余命半年のようです~  作者: 別所 燈


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38 ノアの決断1

 

 ノアはフィーネの体調を確認し、彼女の体質に合わせて改良したポーションを飲ませる。


 彼女の体から日々生命力が削られていくのが感じられた。

 残り少ない時間をノアは研究にささげるつもりだ。

 

「フィーネに延命はしないでくれと言われている」


 ノアはひとり食堂で軽く食事をとりながら、ふとロイドに漏らす。フィーネは最近流動食しか喉を通らなくなっていて、ベッドから起きてくることはなくなっていた。

 ロイドもフィーネを気に入っていたので、さみしげだ。


「あの方がいらっしゃらないのは残念です。生きてほしいです」

「ああ、フィーネがいなくなるのは嫌だ。だから、俺は延命ではなく、彼女の病を治そうと思う」

「可能なのですか?」

 ロイドが目をしばたたく。


「魔力枯渇症の末期というのは、長期間魔力を使い過ぎて、内臓がダメージを受け、ぼろぼろになってしまうということだ。ならば、ぼろぼろになった内臓を修復すればいい。だから俺はエリクサーを作り、フィーネを助ける」

 

 エリクサーは幻の薬と呼ばれている。

 かつては存在したが、その製法はいまは失われていた。


「エリクサーを……、ノア様ならば、可能かと存じます」

 ロイドが力強く言う。


「今日から、研究棟にこもる。フィーネには寂しい思いをさせるかもしれないが、彼女を頼む。それからフィーネの症状は逐一知らせてくれ」

「承知いたしました」


 ノアはフィーネの体調に気を配りつつも、黙々と研究に打ち込んだ。

 そのかいがあって、エリクサー完成まであと一歩となった。


 フィーネの病状には一刻の猶予もない。ノアは王都の研究所へデータと希少な素材を取りに行くため、研究棟にある魔方陣で、王都へ転移する。


 しかし、そこで魔塔の自分の研究室に入り愕然とした。


 研究室は荒らされ、貴重なデータは奪われ、破壊されていた。


 「フィーネの寿命が尽きるまで時間がないのに!」


 ノアは己のデスクをがんと拳で打つ。

 悔しかったが、それ以上に焦りがあった。

 

 どこかにデータがまぎれ残っていないかと、ノアは必死に探した。

 すると魔塔の警備から報告を聞いたエドモンドが慌ててやってくる。


「ノア、たいへんなことになったな。膨大な研究資料を破壊され、盗まれるなど絶対にゆるされないことだ」


 エドモンドは怒りに打ち震えていた。


「ご丁寧にデータの改ざんまでされている。しかし、希少な素材は無事でした。ないのはデータだけ。私は、自領に帰り、研究に戻ります」


 決然と言い放つノアに、エドモンドは目を見開いた。


「何を言っているんだ! お前の大切な研究室が荒らされ、成果が盗まれたかもしれないんだぞ? お前が本気になって犯人を探せば見つかるはずだ」

 エドモンドがノアを引き留めるが、ノアは首を振った。


「時間がない。どうしても助けたい人がいるのです。彼女の存在しない未来を私は望まない」


 ノアは研究室を飛び出した。


「ノア! 十中八九、犯人はユルゲン・ノームだ。奴にお前の研究成果を先に発表されたらどうするつもりだ!」


 エドモンドが必死に言い募る。


「できるものならば、やればいい。だが、奴では無理だ。フィーネが死ぬようなことがあれば、奴を殺す」 

 

 ノアは友人の制止を振り切り、風の魔法を纏い駆け出した。


 タウンハウスに急ぎつくと、ノアはポーションを一本飲み干し、呪文を詠唱し、魔方陣の向こうにふっと消えた。


 ◇◇◇


 数週間後、ユルゲン・ノームがエリクサーの研究を発表した。

 その発見に王都はわいていた。彼が魔法伯の称号を得ることは確定だろう。


「ノアさえ、戻れば確実に奴をつぶせるのに」


 王宮の執務室でその知らせを聞いたエドモンドは、歯噛みする。友人のノアが血のにじむような努力で開発したものである。それを横から掠め取るなど許されないことだ。


 だが、ユルゲンが盗んだという確たる証拠がない。




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