第113話 復讐者到来!
アテナちゃん? どうしたの?
「アテナちゃん? なんで日本語を?」
「お前なんだろ! 私のママを壊したのは!」
は? どういうこと?
「ちょっと待って! どういうこと?」
「お前はママが中学生の時にママの人生をむちゃくちゃにしてくれたんじゃないか!」
「私はまだ6歳だよ! アテナちゃんのお母さんの中学生時代にはまだ私は居ないんだよ!」
「私はもうわかってるんだよ! お前がそこにいるティルなんだろ!」
どうしてそれを!? というかこの子は何者なの!?
「アテナちゃん、君は誰なの!」
「私は相田空架の娘、アテナ・アイオライトだ!」
相田空架……ってティナの事件のアイツか!
「お前のせいでママの人生は狂った! 性犯罪者として生かされて家族や親戚から疎まれて日本に居場所をなくして、イギリスまで飛ばされたんだ! そこであのクズに犯されて、私を産んだんだ! お前のせいでママはそうなったんだ! そしてママはもう死んだ! 私は1人だ! 何もできない! もう生きてすらいけないんだよ!
だから、ママや私をこんな目に合わせたお前を、ティルを殺す!」
……アテナもあの事件の被害者の1人なんだね。
「死ね!」
アテナちゃんが包丁をもって私に襲いかかる。
「もう死んだからこれ以上はごめんだね!」
私はそれを避ける。
「ならもう一度死ね!」
「本当にそう思ってるの?」
アテナちゃんの動きが鈍った。
「そう思ってる!」
「本当はお母さんと会えなくて寂しいだけなんじゃないの? 私を殺したところで何にもならないよ!」
「お前が死ねばママは喜ぶ!」
頭がだいぶ狂ってるな……
「そんな訳ないよ! お母さんはアテナちゃんに幸せになって欲しいからアテナちゃんを産んだんだよ! そうじゃないならアテナちゃんはこの世にはいない!」
「でも、私には生きるすべなんてない!」
「あるよ!」
「どこに!」
「ここにあるんだよ! うちにおいでよ! うちに来ればアテナちゃんのお母さんの親友だっている! その人はいまだにアテナちゃんのお母さんのことを気にしてるんだから!」
アテナちゃんが包丁を落として泣き始めた。私はアテナちゃんを抱きしめる。
「アテナちゃん、私の家族にならない?」
「いいの?」
「いいんだよ。アテナをそんなに苦しめたのは私なんだから」
「ありがとうティア」
「気にしないでいいよ。アテナ」
「ティア、これあげる」
「これは?」
それは青くて綺麗な石の形をした何かだった。
「ママが私に家宝だって言ってたけど、私はもういらないから」
「そう? じゃあ貰っておくね」
私はアテナと手を繋いで家に帰る。




