第104話 バイトの面接
ーーティア視点ーー
はい! 私、完・全・復・活です! 今までご迷惑をおかけしました。
「ティア、今日の3時にバイトの面接に来る人がいるから来たら言ってね。別にティアがやってくれても構わないけど」
「いや、そういうのは店長がやるべきだから私は遠慮しとくよ」
また人任せにしようとして! なんで私が倒れたのか忘れたのかな?
「まあ別に構わないけど合格かどうかを判断するのはティアがしてね。ティアの助っ人なんだから。あと名前は一ノ瀬さんっていうから」
「わかったよ」
開店時刻……
「いらっしゃいませ音無さん」
「こんにちはティアちゃん、いつものお願いしますね」
「わかりました。こちらに用意してあります」
「早いですね。まあ私は毎日この時間にここに来てますからね助かります」
音無さんといつものやりとりをした後……
カランカラン♪
「いらっしゃいませ」
「お母さん来たよ」
音色が来ていた。
「音色? どうしたの?」
「お母さん聞いてないの? 私今日からここでバイトするんだよ」
「え! ママ、聞いてないよ!」
「言ってなかったんだから当然よ。今のうちに音色にいろいろ教えてあげて」
音色に指導をするのか。悪くないな、むしろいいな。
「わかったよ。音色まずは呼び方と挨拶からね」
「はい!」
数時間後……
音色を指導してる間見事にお客さんは誰も来なかった。その間、音無さんはずっと音色を見ていた。
カランカラン♪
「じゃあ音色頑張って」
「わかった……いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「1人です」
「お好きな席へどうぞ」
うん。最初は大丈夫だね。
「すいませーん」
「はい」
「パンケーキとアイスココア下さい」
「かしこまりました。パンケーキとアイスココアですね」
うんうん。いいね。
「雪奈、パンケーキ1つ」
「わかった」
急ぐために呼び捨てもできてる。
「ティア、アイスココア1つ」
「わかったよ」
私のこともお母さんじゃなくてティアか……音色も成長したね。さてアイスココア作らないと。
ママのパンケーキができちゃう。
「はい音色、アイスココアとパンケーキね」
「ありがとう」
音色はお客さんのところに向かう。
「お待たせしました。アイスココアとパンケーキです。ではごゆっくりどうぞ」
音色完璧! さすが私の娘!
カランカラン♪
「「いらっしゃいませ」」
「あの昨夜バイトの面接をお願いした。一ノ瀬です」
「……」
音色がなんか笑いを堪えてるね。知り合いかな?
「はい、お待ちしておりました。店長の田辺雪奈といいます」
「私は一ノ瀬優希っていいます。よろしくお願いします」
やっぱり堅いね。面接ってそんなに緊張するんだね。
「……あの娘を見てどう思いますか?」
何その面接は!? そんな質問するところなんて普通ないよ!?
「はい、とても可愛いらしくて抱きつきたいと思います」
何その感想……
「ティア、ちょっと来なさい」
嫌な予感しかしないんだけど……
「この娘をしばらく抱きしめていてください。私は少し席を外しますので」
変な面接……
「うわぁ!?」
「可愛い……すごいモフモフだ。すごい癒される……」
顔、凄く緩みきってますね。そういう顔がいいんですよ。
「あの、どうして働きたいなんて思ったんですか? こんな店なのに」
「私こういう内装とか落ち着いて好きなんですよ。それに音色に一緒にバイトしてみない? って誘われたからね。音色の頼みなら断る理由もないし」
音色を褒めるとは私の中であなたの評価が上がっていきますよ。
「音色さんとはどういう仲なんですか?」
「私はね。音色と親友だと思っているよ。音色が7歳の時に音色が急に積極的になってね。今まではなんか音色ちゃんファンクラブがあって近づきにくかったんだけどね。その時以来から私は音色と仲良くなったんだよ。音色はお母さんの手紙のおかげって言ってた」
あー、あの手紙? か……でも音色がお世話になったね。
「……じゃあ合格ね。今日からここで音色と働いてね」
「え?」
まあ混乱するよね。
「ママはね。私に全て任せたんだよ。だから私が本当の審査員だよ」
「ええー!?」
驚いてるね。
「ママの前だと堅かったね。でもそれだとその人の本性がわからないから、私から聞いたんだよ」
「なるほど。道理で変な面接だと思った」
「いや、あれはママの素が混じってただけだから」
「……そうなんだ」
「まあ頑張って音色と働いてね。詳しいことはもう音色に教えてあるから音色に聞いてね。じゃあこれからよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうしてバイトが二人も増えた。




