第63話 レイテ湾海戦(前編)
午後4時45分、彼我の距離32,000メートルで『大和』の46センチ砲が初弾発射する。『初弾夾叉』を伝令兵が伝える。
午後4時55分、それまで沈黙していた『長門』、『金剛』、『榛名』も砲戦に参加し始める。そうすると、オルデンドルフ艦隊も砲撃を開始したようで、お互いの艦の周囲に水柱が立ちこめる。
午後5時10分、先行していた軽巡『能代』、駆逐艦7隻が16本の魚雷を米戦艦部隊にめがけて放つ。そのうち1発が戦艦『ペンシルベニア』の艦尾付近に命中し大きな水柱が上がる。しかし、その水柱が収まっても『ペンシルベニア』の速度は落ちない。
午後5時15分、距離23,000メートルで戦艦『カリフォルニア』に46センチ砲弾が命中する。そして、ここで米戦艦群が変針し丁字戦法に持ち込む形ができ始める。『ペンシルベニア』、『カリフォルニア』、『テネシー』と続く艦影が栗田艦隊の『大和』の航路を抑え込む形となる。
このままでは、敵に丁字戦法を取られると判断した栗田艦隊は同じく変針し、『ペンシルベニア』の進路に沿うように進む。距離22,000メートルで『長門』が副砲塔に命中弾を受ける。一時的に副砲の使用ができなくなるが、他に被害は広がってはいない。
午後5時25分、軽巡『矢矧』、駆逐艦6隻が14本の魚雷を放つと再び『ペンシルベニア』に2本水柱が上がり、艦橋付近に火災が発生する。さすがの『ペンシルベニア』も右舷に傾き速度を落とし、後続の艦に道を譲る形で落伍する。
午後5時30分、軽巡『能代』が艦種に命中弾を受け艦首が断裂する損傷を受ける。また、この時間から島影に隠れていた米魚雷艇が姿をあらわし、重巡、戦艦に向けて魚雷を放つようになる。
午後5時35分、軽巡『能代』が続けて命中弾を受ける。また、『大和』にも敵の砲弾が集中し始め、至近弾多数を受ける。そして『金剛』にも命中弾があり、水上機の発着艦が不能になる。




