第62話 スルアン島灯台の西を目指す
午後0時18分、『大和』のレーダーが敵攻撃部隊を感知し『対空警戒を厳にせよ』が下令される。
私はサトミに、東郷チハヤになるよう依頼する。
午後0時30分、敵攻撃機42機は『大和』、『長門』、『金剛』、『榛名』に狙いを定めて襲いかかってくる。敵艦爆の急降下爆撃で『大和』に7発、『長門』に4発の至近弾が降りそそぐが、命中弾は与えられない。
午後3時10分、今度は前に倍する敵攻撃機が現われる。今回の被害担当艦は『金剛』のようで、30機の艦爆から急降下爆撃を受け右舷艦橋付近に至近弾を受ける。このため、『金剛』は重油が漏れ出したが、30分後にはどうにか復旧する。
『大和』にも至近弾8発が降りかかるがどうにか躱していく。『長門』も艦首に命中弾かと思われたが、爆弾は艦首を突き抜けて舷外で爆発し至近弾となる。『榛名』はうまく敵弾を躱している。
午後4時20分、サマール島南端からスルアン島を望む地点まで来たところで『敵戦艦見ゆ、距離38,000メートル』との報告が大和見張員からもたらされる。
戦艦部隊と重巡部隊は遠距離砲戦準備、軽巡『能代』と『矢矧』に率いられる2箇水雷戦隊は艦隊から飛び出して水雷戦に備える。私もサトミに秋山サナエを呼び出すよう指示し、これからの戦闘に備える。
敵は昨夜の戦闘で西村部隊を全滅させたオルデンドルフ少将の率いる戦艦部隊で、戦艦6隻、重巡4隻を基幹とする部隊だ。今回も丁字戦法で連合艦隊を迎え撃つつもりにしていることだろう。
逆もまた真なりで、栗田艦隊はオルデンドルフの戦艦部隊を丁字戦法で打ちのめす予定にしており、お互いに敵艦隊の先頭艦を押さえようとする戦いになるはずだ。




