第60話 45口径46センチ砲と護衛空母
「ドォーン」
『大和』の46センチ砲が唸りを上げる。強装薬が1トンの徹甲弾を33キロ先へと運ぶ。第5斉射で夾叉弾着を観測した次の第6斉射でようやく命中弾を得る。
ザクっとした軽い弾着の命中弾だったのは、敵が戦艦ではなく護衛空母のペラペラな装甲を撃ち抜いてしまったからだ。
瞬発信管なら空母構造物を吹き飛ばすのも可能かもしれないが、生憎、徹甲弾と零式弾しか持ち合わせがない。
頼みとする巡洋艦隊はこの時点では、まだ射程圏外を走行中であり、水雷戦隊の魚雷戦も開始まではまだまだ時間がかかる。
午前7時25分、敵空母群がスコールに入ろうとするところを『大和』の副砲が米駆逐艦『ジョンストン』をとらえて撃沈する。次に米駆逐艦『ホーエル』が魚雷を放つも全て回避され、戦艦『榛名』、重巡『羽黒』の砲撃によって撃沈された。
午前7時50分、スコールから出てきた米空母群の最後尾に位置する護衛空母『ホワイト・プレインズ』を『金剛』と『榛名』の主砲がとらえる。数発の命中弾を与えると左舷に傾斜して大煙を上げながら停止した。
午前8時15分、重巡『熊野』、『鈴谷』が傾斜して燃え続ける『ホワイト・プレインズ』にその主砲でとどめを刺した。
午前8時20分、『大和』は護衛空母『キトカン・ベイ』を猛追していた。最初は小さな煙を上げていた『キトカン・ベイ』だったが、やがて『榛名』の砲撃が加わると火の勢いが強まり、次の『大和』の一斉射で轟沈した。
『キトカン・ベイ』の前を走っていた護衛空母『ガンビア・ベイ』は先行していた『能代』の率いる水雷戦隊につかまり、魚雷6本中、2本が命中し大きく右舷側へ傾斜していた。
午前8時半、すでに『榛名』の主砲弾により炎上していた護衛空母『ファンショー・ベイ』が『筑摩』の雷撃によって沈められる。
同時刻、『ファンショー・ベイ』の南を逃げていた護衛空母『カリニン・ベイ』と『セント・ロー』は軽巡『矢矧』の率いる水雷戦隊に魚雷12本を浴びせられ、それぞれ3本ずつが命中し、大きく速度を落としていた。
午前9時10分、各艦からの戦闘状況を聞きたいとする栗田中将が『逐次集マレ』を送信する。
すでに『全軍突撃せよ』から2時間以上が経過し、艦隊も四散してしまっていた。




