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第57話 シブヤン海へ

 10月24日午前6時、基地航空隊の索敵機からサンベルナルジノ海峡付近に敵機動部隊発見の報が相次いでなされる。これに対応して栗田艦隊も索敵機を飛ばして情報の収集に努める。


 午前8時10分、敵索敵機を『大和』見張員が発見、敵機動部隊に位置が暴露する。


 司令部内で敵空襲に備えた話が始まった際に、私はサトミに小声で伝える。

「東郷チハヤをお願いできないか」


 そう言うやいなや、サトミは東郷チハヤに姿を変えてしまう。これで今日の空襲に対応した防御バフが効くことになる。


 午前10時過ぎ、『大和』の電探員が敵攻撃隊発見を報告する。

「敵さんもいよいよ、やってきましたな」

 小柳少将がそう言うと栗田中将も呼応するかのように「対空警戒を厳にせよ」を指示する。


 午前10時26分、『大和』の「対空戦闘始め」の合図と同時に艦隊各艦も火蓋を切り、激しい弾幕が米攻撃隊を包む。

 シブヤン海を進む栗田艦隊は『大和』を中心として『武蔵』、『長門』が周囲につく第一部隊と、戦艦『金剛』を中心として『榛名』が周囲につく第二部隊とに分かれて進軍していたが、敵攻撃隊は第一部隊のみを狙って『大和』、『武蔵』に攻撃を仕掛けてくる。


 対空砲火の間隙をぬって敵艦爆が『武蔵』に六〇キロ爆弾を命中させたが、『武蔵』の砲塔蓋板に弾かれて空で爆発する。『大和』にはまだ命中弾はない。


 そうしている間に、敵艦攻隊が輪形陣の外側に取り付き重巡『羽黒』、『妙高』を狙って魚雷を発射する。三発の魚雷が『妙高』に向けて放たれたが、いずれも艦尾をくぐり抜け、被雷することはなかった。


 午前10時35分、第1次空襲は何の被害もなく終わった。きっとチハヤもご満悦だろうと思ってその面差しを見てみるが、案外表情には出ないものなのか静かに俯いているだけだった。


 午前11時56分、今度は『武蔵』の電探員が敵攻撃隊を発見する。艦戦12機、艦爆12機、艦攻9機の計33機からなる攻撃隊だったが、『武蔵』の艦首付近に命中弾、『大和』の艦尾に2発の至近弾を与えただけで午後0時20分には全機離脱していった。

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