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第47話 翔鶴往く

 午後1時、『大鳳』艦橋から見るに『翔鶴』の状況はまさに断末魔のそれであった。艦首は海水で洗われ艦内の火災は鎮火する見込みもなかった。真珠湾攻撃以来の武勲艦ということもあり、諦められない何かが総員退艦を先延ばしにしているようにも見える。


「乙部隊第1波、第2波の戦果報告が上がってこないのはなぜだ」


 苛立ち始める艦橋で、その結末を知る私は少々息苦しさを覚えていた。99機の2波にわたる攻撃の戦果が空母『エセックス』への250キロ爆弾1発のみで、艦攻隊が全機撃墜されたため戦果報告がないというのは言うに忍びなかった。


 午後2時10分、大爆音とともに『翔鶴』はマリアナ沖に沈んでいった。艦歴は2年10ヶ月であった。


 午後2時40分、乙部隊攻撃隊の帰還始まる。第1波零戦17機中7機、爆装零戦25機中2機、天山艦攻7機中0機の計49機中9機が収容された。


 午後3時35分、乙部隊攻撃隊第2波の帰還始まる。第2波零戦20機中6機、九九式艦爆27機中0機、天山3機中0機の計50機中6機が収容された。


 午後4時、帰還機数のうち次回攻撃隊に使用可能な前衛部隊、甲部隊、乙部隊の再出撃可能機数を報告させると零戦35機、彗星艦爆33機、天山14機の計82機との回答がなされた。朝には440機の稼働機を数え、早朝には43機の偵察機を放っていた部隊が夕方にはほぼ半身不随の状況に陥ったのである。


 小沢機動部隊も日本軍パイロットも見誤っていたことがあるとすれば、護衛空母の搭載機数の見積もりの誤りである。護衛空母の搭載可能機数のうち3分の2以上はF6Fが割り当てられており、正規空母の発着艦が不可能になるにつれて、護衛のF6Fの発着艦枠が増えていく仕組みになっていたのだ。


 ここまでで、航空機の損失は日本軍360機に対して米機動部隊は百機余り、空母に限れば日本軍1隻喪失に対して米軍正規空母7隻撃沈破、護衛空母3隻撃沈破であり、引き時はまさに今である。

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