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第42話 至難の薄暮攻撃

 薄暮攻撃の言葉には、司令部一同大いに驚いた様子だ。


「薄暮攻撃? それは、攻撃隊に生還は期さないという片道攻撃との意味でしょうか」


 小沢中将も呆気にとられて言葉が追いついてこない。


「いいえ、薄暮攻撃、夜間着艦となりますので、今から打ち合わせておかないと間に合わないでしょう」


「島村様、お言葉を返すようで恐縮ですが、我が艦隊にそのような技倆を持ち合わせた搭乗員はおりません。買い被りが過ぎましょう」


「いやいや、部下の技倆を見くびるようでは成功するものも失敗してしまいます」


「そこまでおっしゃいますなら……青木参謀、田中参謀、両名に薄暮攻撃隊の準備を命じる。急ぎ手配しろ」


 両参謀は呆気にとられながらも、諾として下部艦橋に降りていった。

 


 午後2時過ぎ、敵空母発見の知らせが届く。グァム島から南に50海里の沖に敵空母3群を見つけたようだ。

「攻撃隊発艦準備」が命ぜられ、艦戦18機、艦爆27機、艦攻9機の計54機が発艦していく。


 攻撃隊が艦隊上空で編隊を組んで飛んでいく様はミッドウェー海戦を彷彿とさせる。


 青木参謀が空を見ながら涙を浮かべている。

「編隊を組んで飛べるとは……」


 何か相当レベルの低いところで喜ばれているのに愕然とする。


 敵との距離は三百二十海里と予想され、予定通り飛べば午後5時過ぎには攻撃隊が敵艦隊を襲うはずである。


 なにか不安を感じたのか小沢中将が尋ねてくる。


「島村様、攻撃隊は敵の電探には探知されないのですか?」


「当然探知されます」


「それでは、この攻撃は相当厳しいと見ないとなりませんね」


「それでしたら、真珠湾攻撃のときも、ミッドウェー海戦でも、常に敵は電探で我が方を察知していたのですから、厳しいかどうかは分かりません。ただ、薄暮攻撃は見つかりにくい攻撃手法ですのでレーダーごときで後手に回って欲しくはありませんね」

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