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第41話 空母『大鳳』に降臨す

 6月18日午前10時、フィリピン海を東に向かう空母の上に素っ裸で私とサナエが放り出される。赤城とは異なり、鋼製の甲板に右舷艦橋であることから、空母『大鳳』であることは間違いない。


 私たちを見て艦橋の方から2人の将校らしき人影が走ってくるのが見える。せめてサナエの前に立ちふさがって、将校の質問に答える。


「怪しいヤツ。所属と氏名は?」


「怪しいとは失敬な、私は高天原の元帥府の御使みつかい島村実継である。参謀長の古村少将に取り次いでくれ」


「なぜ貴様が古村閣下の名前を知っている」


「元帥府の御使いであるからなんでも知っているぞ。首席参謀は大前大佐、作戦参謀は有馬中佐だろう」

 私は朗々と第1機動艦隊司令部の陣容を言い明かすと、将校の受け答えが変わってくる。


「島村様、どうかこれを羽織って下さい。そちらの御婦人も」

 そう言って軍服の上着を羽織った私たちを連れて艦橋に取り次いでくれる。


 そして、午前10時半にようやく第2種軍装を着て小沢中将率いる司令部にたどり着いた。


「これはこれは、ミッドウェー以来ですかな、島村様」


 古村少将と艦橋で握手を交わすと、上官である小沢中将にも紹介してくれる。


「小沢治三郎です。島村様」


 御年58歳になった緻密肌の小沢中将と握手を交わす。


「ところで、わざわざ我が艦隊にご降臨頂きましたのは、何か御忠告戴けることが出来いたしましたか」


「はい、高天原からみまするに、陣形が良くございません。前衛部隊が飛び出しすぎですので距離をお詰め下さい」


「しかし、前衛部隊はいざとなったら敵機動部隊にとどめを刺す役回り。余り近くに置いておいてもと……」


「小沢中将、この度の敵は正規空母7隻からなる部隊。『大和』や『武蔵』の足で追い回せる敵ではございません」


「はい、それでは、仰せの通り甲乙部隊と近付けて配置しましょう。他にはなにか……」


「あと、午後になって敵機動部隊発見の報が届きます。その際には薄暮攻撃を検討願います」


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