第39話 絶対国防圏
ーーーー皇紀2604年6月、絶対国防圏をめぐってマリアナ方面の防備を固める日本軍に対して、米機動部隊はその数的優位に物を言わせて襲いかかろうとしていた。
機動部隊本隊 指揮官:小沢治三郎中将
(本隊甲部隊)
第一航空戦隊 空母:『大鳳』、『翔鶴』、『瑞鶴』
第五戦隊 重巡洋艦:『妙高』、『羽黒』
第十戦隊 軽巡洋艦:『矢矧』、駆逐艦:『霜月』
第十駆逐隊 駆逐艦:『朝雲』、『風雲』
第十七駆逐隊 駆逐艦:『磯風』、『浦風』、『谷風』
第六十一駆逐隊 駆逐艦:『初月』、『若月』、『秋月』
(本隊乙部隊)
第二航空戦隊 空母:『隼鷹』、『飛鷹』、『龍鳳』
戦艦:『長門』
重巡洋艦:『最上』
第四駆逐隊 駆逐艦:『満潮』、『野分』、『山雲』
第二十七駆逐隊 駆逐艦:『時雨』、『五月雨』、『白露』
第二駆逐隊 駆逐艦:『秋霜』、『早霜』
駆逐艦:『浜風』
(前衛部隊)
第三航空戦隊 空母:『瑞鳳』、『千歳』、『千代田』
第一戦隊 戦艦:『大和』、『武蔵』
第三戦隊 戦艦:『金剛』、『榛名』
第四戦隊 重巡洋艦:『愛宕』、『高雄』、『鳥海』、『摩耶』
第七戦隊 重巡洋艦:『熊野』、『鈴谷』、『利根』、『筑摩』
第二水雷戦隊 軽巡洋艦:『能代』、駆逐艦:『島風』
第三十一駆逐隊 駆逐艦:『長波』、『朝霜』、『岸波』、『沖波』
第三十二駆逐隊 駆逐艦:『藤波』、『浜波』、『玉波』、『早波』
米機動部隊がマリアナ諸島沖に出現したことを受けて、元帥府でもその対応が諮られた。
「いよいよ、米軍がサイパン島に上陸を始めた。これを支援する敵機動部隊は空母15隻を基幹とする強力なものである。艦載機は九百機を超えておる。対する我軍も空母9隻を集めたが、艦載機は四百四十機ほど。しかも練度は低く一度空母を発艦したら着艦できないパイロットたちがほとんどを占める状況じゃ。予想損失は空母三隻喪失、四隻撃破、未帰還機四百機。これに対して予想戦果は空母小破二隻のみである。誰か督戦に赴かんとするものはおらぬか」
森閑とした水師営で伏見宮に応える水師は当然ながらいない。
ただ一人、伏見宮の視線を一身に浴びて、やむを得ず答えるのが次席水師を務める島村実継である。
「伏見宮様、お見受けしたところ数の差以上に戦力差がついておるようでございます。ここは、他日に備えて戦力を温存するのが得策かと……」
「しかしの、今回の戦いにはサイパン島がかかっておる。サイパンにB29の出撃基地が完成してしまえば本土空襲は待ったなしじゃ。そこで機動部隊が残っていようがいまいが本土が焼け野原になってしまえば意味がない」
「サイパンの陥落が、我が国の敗北を意味するというわけですか」
「そう、だから絶対国防圏と大層な名前までつけたのじゃ。それに、戦力が残っている以上、軍として戦わない選択肢はない。ここで敵に一矢を報いることができれば、講和の席にもつきやすくなるというものじゃ」
講和の言葉に水師営の空気が一瞬、氷ついたように見えた。
「講和会議に直結する戦闘とあれば、受けずにはいられません。できましたら秋山サナエという尚書を連れてまいりたいと思います」
その言葉を聞くと、伏見宮は喜んで尚書殿に使いをなした。




