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第38話 元帥府戦史研究室

 私とハルカは転移限界まで、文字通り三川艦隊の目となり耳となり活躍した。


【戦果】重巡『シカゴ』、『キャンベラ』、『オーストラリア』、

    『ヴィンセンズ』、『クインシー』、『アストリア』 撃沈確実

    軽巡『サンファン』撃沈確実

    潜水艦『S-44』撃沈確実

    軽巡『ホバート』撃破確実

    輸送船15隻 撃破確実


【損害】重巡『加古』沈没



 元帥府に戦場からの転移を報告すると、またもや元帥府戦史研究室に出頭するよう命じられた。


 戦史研究室は元帥府の片隅にある、例の伏見宮水師の通常の執務室だ。


「おう、ごくろう、ごくろう」


「お呼び出しとのことで、何かございますでしょうか」


「今回の戦いでは、

三川艦隊の接近を知らせなかった豪州軍偵察機の搭乗員が悪い。

三川艦隊をサボ島の島影と誤認した駆逐艦『ブルー』が悪い。

三川艦隊の観測機を味方飛行機と勘違いした重巡『シカゴ』が悪い。

「我は味方なり」の発信を最後までやめなかった重巡『オーストラリア』が悪い。

三川艦隊の砲撃をガダルカナル島への味方の砲撃と勘違いした重巡『ヴィンセンス』が悪い。

三川艦隊から逃げるために帰路に当たる北東へ進む軽巡『ホバート』が悪い……とまあ、探せばいくらでも戦犯が出てくるもので、とにかく、戦勝を褒めるというよりは戦犯探しで大忙しだったんじゃ」


 その反応を聞いて不承不承、私はこう答える

「そこは快刀乱麻のごとく敵を討ち取った我軍を褒めそやしても良さそうなものですが」


「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし、と言うじゃろう。今回の勝ちは皆、不思議の勝ちということで評価は割れなかったのじゃ」


「輸送船を沈めれば一隻で重巡一隻の価値ありと言われたから行ったのですが、その件はどうなったんですか?」


「確かに輸送船の価値は高いんじゃが、如何せん、その間の陸軍の進出が遅くて……誠に申し訳ないんじゃが、活かしてやることが出来なさそうなんじゃ」


「それでは評価すると言った部分は、実は戦略的価値は無く、海戦自体、見た目はバカ勝ちだから内容は吟味しないと言うことですか?」


「水師営の見立てでは残念ながら、そのような結論となったが、私は内心高く評価しておるぞ」


 重巡6隻、輸送船15隻を撃沈破したことで迂闊にも楽勝ムードを醸したことを悔いながら、私とハルカは戦史研究室をあとにした。





(伊東ハルカ篇・了)

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