第37話 再突入はせず
三川艦隊の接近を知らせなかった豪州軍偵察機の搭乗員
三川艦隊をサボ島の島影と誤認した駆逐艦『ブルー』
三川艦隊の観測機を味方飛行機と勘違いした重巡『シカゴ』
「我は味方なり」の発信を最後までやめなかった重巡『オーストラリア』
三川艦隊の砲撃をガダルカナル島への味方の砲撃と勘違いした重巡『ヴィンセンス』
三川艦隊から逃げるために帰路に当たる北東へ進む軽巡『ホバート』
とにかく、ガダルカナル泊地の連合国艦隊は混乱を極めていた。
面白いように敵艦隊を撹乱した三川中将は、帰りがけの駄賃とばかりに軽巡『ホバート』を追ってガダルカナル泊地北水道を目指して北東に進路を取っていた。
このとき、三川艦隊の最大戦速は『夕張』がスクリュー三軸のうち一軸故障していたため、最高26ノットとされていたことから、結果として軽巡『ホバート』、駆逐艦『モンセン』、『ブキャナン』の逃走を許してしまう。
9日午前1時23分、三川中将より「全軍引き揚げ」が下令される。
「まだ、無傷の巡洋艦、輸送船があるやも知れませんが再突入はなされませんか」
艦長の早川大佐が尋ねたが、三川中将からは答えはなかった。
翌朝午前7時、疲労の極みにあった三川艦隊にあって、伊東ハルカが索敵によりアメリカのS級潜水艦『S-44』を右舷前方に発見し、『青葉』の水偵と『鳥海』の爆雷投下の協働でこれを撃沈した。
私たちが三川艦隊に別れを告げるのは、転移限界まで、もう少し後になってからのことだった。




