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第36話 『加古』轟沈!

 ドォーンッ。轟音とともに『加古』の左舷に3本の水柱が上がる。


「敵軽巡洋艦2隻、北方向。さらに駆逐艦2隻を伴う」

 ハルカがさらなる敵発見を告げる。


「『加古』、轟沈!」

 伝令兵の悲痛な叫びが届く。


「北へ向かう。左舷砲戦準備。『古鷹』に連絡「我に続け」」

 三川中将がそう叫ぶと『鳥海』は左へ旋回し艦種を北方向に向ける。


 沈みつつある重巡『ヴィンセンズ』、『クインシー』を近くに見ながら軽巡『サンファン』、『ホバート』の方に照準を向ける。


「敵艦影2、北方向、九〇〇〇メートル!」

 反航戦のため、面白いように彼我の距離が縮まっていく。

「敵影、北方向八〇〇〇メートル!」

「敵影、北方向七〇〇〇メートル!」

 三川中将が魚雷戦を指示する。

「左舷魚雷戦開始!」

ッー」


「左舷砲戦開始!」

 同時に我軍重巡部隊の二〇センチ砲が火を吹く。


 常装薬だが、船が小さいため艦橋でも顔に汗が流れるのを感じる。


「敵影、北方向五〇〇〇メートル!」

 その時、『鳥海』の艦橋に命中弾を受ける。幸い、上部艦橋での死傷者は出なかった。


 やがて探照灯が使える距離にまで敵艦との距離が縮まると、『鳥海』が暗がりに『サンファン』の艦影を映し出す。


 映し出された目標をめがけて『青葉』『衣笠』『古鷹』の3艦は『加古』の仇討ちとばかりに二〇センチ砲の射撃を集中させる。


 敵の『サンファン』の主砲は一三センチ砲一六門と小口径多砲主義で、続く『ホバート』は軽巡とはいえ一五センチ砲八門を有している。


 時間とともに光の中に溶けていくように見える敵艦だが、近距離の戦闘となり高角砲から機銃までが使用された。


 そして、味方艦『夕張』の放った魚雷が『サンファン』に命中し、『サンファン』は機関を停止し左舷側に傾く。


 その後ろで予想外の敵の数に気づいた『ホバート』が北東めがけて戦場離脱を試みていた。

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