元帥府戦藻録
6月に攻略したミッドウェー島ではあったが、主力艦隊や空母機動部隊が去り、水際陣地の構築が完了すると占領部隊の一木支隊が島を離れた。
零戦三〇機、攻撃機三〇機、及び一個海軍陸戦隊がミッドウェー島基地の常備戦力の全てである。
連合艦隊司令部は、これでハワイ攻略の目処がたったとしているが、ハワイ=ミッドウェー間は一〇〇〇キロ以上離れておるゆえ、ハワイ攻略の支援材料となるものは一切なし。
さらにミッドウェー島基地は7月1日に『サラトガ』、『ワスプ』を基幹とする米空母機動部隊の奇襲を受く。続いて、第6海兵強襲大隊のハラスメント上陸(占領目的ではない強襲作戦)を受け、地上部隊は岩陰に隠れていた2名の陸戦隊以外は全滅せりとの報告を受く。
ミッドウェー島基地隊なかんずく航空機60機と搭乗員120名余りを一挙に喪失せるは、度し難いとして、新たに送り出す航空隊は零戦隊のみと整理せり。しかしながら、艦攻隊なくば索敵の途なく、ミッドウェー島基地隊は『盲、蛇に怖じず』の状況とならんや。
7月18日をもってミッドウェー島に第2次占領部隊を送り込むため、『赤城』、『加賀』、『飛龍』を基幹とする空母機動部隊を派遣せしところ、敵空母『エンタープライズ』、『サラトガ』、『ワスプ』が現れ、第2次ミッドウェー海戦が生起す。我が方『加賀』、『飛龍』を敵潜水艦の奇襲を受け喪失、その後、敵機動部隊の奇襲を受け『赤城』をも大破後処分せり。この後、輸送船団にも攻撃が相次ぎ、優秀輸送船十一隻中七隻に被害が及び、ミッドウェー島の放棄が決定す。
そもそも、ミッドウェー島攻略の主眼は敵機動部隊の誘引にありとする者があるが、その戦略的価値を否定するのであれば、ミッドウェー島は占領破壊のみすべきにあらんや。




