第24話 ホーネットとウイスキー
午前11時25分、『赤城』の艦橋で繁岩隊からの「ト連送」を受信する。
「どうだろう、草鹿君。『ホーネット』もやれるか賭けないか。山本長官からせしめた年代物のウィスキーがあってね」
南雲中将は草鹿少将に笑顔で聞くと、草鹿少将も笑顔で答える。
「それは拝領致したいところですが、オッズが被りませんかね」
「繁岩君は優しい男だからねえ、見逃してやるんじゃないかと思わんか」
「それでは閣下は見逃す方に、私は一刀両断にしてしまう方に賭けましょうか」
「よし、それで構わんよ」
驕慢なのか余裕なのか、議論が割れそうなところだが、勝てば官軍である。
午前11時48分、伝令兵が電文を読み上げる。
「繁岩隊より入電。ワレ、『ヨークタウン』級一隻撃沈、重巡四隻撃破セリ。以上」
最後の『ヨークタウン』級空母『ホーネット』撃沈の報告に司令部がどっと沸いた。
「草鹿君、重巡四隻はやりすぎだ。繁岩君に司令長官の仕事を取らないよう注意するようにせんとな」
「閣下、スコッチウイスキーは頂きますよ」
「喜んでくれてやろう。あとで長官室まで来たまえ」
午前11時50分、伝令兵が潜水艦参謀の渋谷龍稺中佐に電信文を渡す。
「本日一〇〇〇ヨリ敵潜水艦ニ対応シアリシ駆逐艦『嵐』ノ行方知レズ」
結局、『嵐』については敵潜水艦攻撃任務中に、なんらかの事故に巻き込まれて沈没したものとされた。
午後0時40分、敵機動部隊攻撃隊(友永隊)第1波が帰還し、艦戦36機中33機、艦爆36機中31機、艦攻36機中29機、計108機中93機を収容した。
また、収容作業中の間隙をついて『エンタープライズ』と『ホーネット』の残存機から成るSDB爆撃隊19機が『赤城』と『加賀』の上空に近づいていた。




