第23話 友永隊、斯くの如く戦えり
午前10時40分、友永隊は米機動部隊の直掩機F4Fの編隊40機と遭遇していた。
たちまち、零戦隊との間で熾烈な戦闘が始まる。
それを見た友永大尉は味方機に「突撃態勢作レ」を送信し眼下に見える『ヨークタウン』級空母に部隊の半数を向かわせると、自らは残りを率いてさらに東を目指した。
午前10時48分、輪形陣の低空を縫うように艦攻隊が射点に入ろうとするのを入らせまいと米軍の対空砲火が次々と火を吹く。ようやく魚雷を放っても『ヨークタウン』は巧みな操艦術でかわしていく。
そうした刹那、一機の九九艦爆が艦橋付近に二五〇キロ爆弾を命中させるとそれを呼び水に三箇所から爆弾の命中音と煙が上がる。
さらに追い打ちをかけるように九七艦攻が右舷に二本、左舷に一本の魚雷を命中させた。
『ヨークタウン』が断末魔の悲鳴を上げている頃、友永大尉機は東二五海里の地点に二つの輪形陣からなる新たな敵空母を発見していた。
「ワレ敵空母二隻を発見セリ」
敵上空の直掩機は6機、それを確認すると僚機に「突撃態勢ヲ作レ」を下令し、自ら北側の輪形陣の外周に取り付いていく。艦爆隊は一気に高度を上げ急降下爆撃の態勢に入ろうとする。
「ト連送(全軍突撃せよ)」と同時に、友永大尉機は海面を舐めるように進み、米軍の雨あられのような対空砲火を掻い潜りながら飛ぶ。
17機の九七艦攻が同じように編隊を維持したまま飛行する技倆は驚くべきものがある。
一機、また一機と脱落していく列機を祈るような思いで横目に止めつつ、輪形陣の中央を睨むように凝視しながら魚雷発射のタイミングを図る。
八五〇キロの魚雷を放つと機体がガクンと持ち上がり身軽になる。友永大尉が気が付いてみると胴体右のタンクに被弾しているが、燃料は漏れていないことを確認して機位を上げる。
友永隊がこの日に放った魚雷十二本のうち命中したのは四本で『エンタープライズ』に二本、重巡『ミネアポリス』、『ニューオリンズ』に各一本だった。
友永大尉機が『ヨークタウン』の僚機のもとに戻ると、『ヨークタウン』は機関を停止して右舷に大きく傾いていた。被弾箇所からの煙がもうもうと立ち登っており、まさに最期の時を迎えようとしている。
「ワレ、『ヨークタウン』級一隻撃沈、同一隻撃破、重巡二隻撃破セリ」
友永大尉は帰路に『赤城』司令部あてに打電し意気揚々として引き上げていった。




