第22話 敵機直上! 運命の5分間
攻撃隊を全機発艦させたあと、ミッドウェー島基地航空部隊の攻撃を退けた南雲機動部隊に、次は『ホーネット』からの攻撃隊が襲いかかった。
最初に現れたのは『ホーネット』の雷撃隊TDB艦攻15機で、低空で鈍重な動きしかできないTDBは射点に到達する前に14機が撃墜され零戦の餌食となった。
その30分後、『エンタープライズ』からの雷撃隊が同じように低空からの侵入を試みるが9機全機が同じように零戦に叩き落される。
午前10時になって『ヨークタウン』の雷撃機TDB14機がまた低空から魚雷の射点をめがけて現われる。
『ヨークタウン』雷撃隊は運良くF4F戦闘機6機と同時に侵入してきたため直掩の零戦隊はほとんど低空に集められたが、どうにか雷撃機を全機、葬ることに成功した。
午前10時20分、『エンタープライズ』のSDB爆撃隊32機は南雲機動部隊のはるか南で彷徨っていた。ランデブーポイントの指定場所に味方はおろか敵空母の影すら見えないのである。
マクラスキー飛行隊長は周辺を捜索し、ようやく見つけた駆逐艦『嵐』に全弾を投弾し、虚しく帰投の途についた。
午前10時30分、『蒼龍』の甲板見張員が大声を上げる。
「敵機直上!」
そこには『ヨークタウン』爆撃隊のSDB14機が急降下爆撃の態勢に入ろうとしていた。
太陽を背にきれいな70度の角度をつけたお手本のような急降下爆撃だったが、SDB14機のうち5機までが投弾装置の不良で投弾に至らなかった。
それでも、『蒼龍』は前部エレベーター付近に直撃弾3発、艦橋付近に至近弾を受け、大火災を発生させていた。
幸いなことに、その後、米艦載機の攻撃は止み、『蒼龍』の艦長柳本大佐は消火と至近弾による浸水への対応に大わらわになったが、火災は手が付けられないほどとなり、主缶に火災が及び機関が停止するとみるみるうちに落伍していく。
南雲中将は『蒼龍』に駆逐艦『野分』、『萩風』、『舞風』の護衛をつけて警戒と救護の任に当たらせた。
『ヨークタウン』艦爆隊の指揮官マクスウェル・レスリー少佐は自身の機は投弾できなかったが、後続機が『蒼龍』に直撃弾を与えたことに喜び、攻撃後は全機をまとめて無事帰還の途についた。




