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第21話 北へ進路を取る

 午前7時28分、待ちに待った朗報が舞いこむ。『筑摩』5号機からである。


「敵ラシキモノ十隻発見。ミッドウェー島ヨリノ方位一〇度、一三〇海里」


 これを聞いた南雲中将はきっぱりという。

「連合艦隊司令部に向けて打電。われ、敵機動部隊を発見、これを撃滅せんとして本艦隊は北へ進路を取る」


「それではミッドウェー島から離れることになりますが」


 機関参謀が訝るように言うが、南雲中将はたしなめるように言う


「一時北へ逃げるんだよ。作戦計画にもあっただろう、ミッドウェー島攻略の最中に敵機動部隊が現れた場合、まず、司令部が決断を下す。もし必要な場合、連合艦隊司令部が指示をすると」


「分かりました、下部艦橋にも伝達してまいります」

 南雲中将は私の方を向いて言う。


「島村様がミッドウェー島空襲部隊には、艦爆も艦攻も使わず、零戦隊と先導機として彗星艦爆1機を加えた37機で行ってもらった。味方を騙すようなことにはなったが、おかげで艦爆84機、艦攻91機を敵空母に回せることになった」


 足が早くて行動半径も広い零戦と彗星(この時点では試作機十三試艦爆)だからなしうる手早い航空撃滅戦に私は舌を巻く。


 午前8時7分、ミッドウェー島空襲部隊の艦戦36機中35機、彗星艦爆1機中1機を収容、帰還報告を行う。 


 午前8時30分、改めて敵機動部隊攻撃隊(友永隊)第1波、艦戦36機、艦爆36機、艦攻36機、計108機を送り出す。


 また、同時に『筑摩』5号機より「敵は空母ラシキモノ一隻ヲ伴フ」と敵空母発見の報を伝えてきた。


 南雲司令部が「ようやく来たか」と大いに盛り上がる。それを受けてか、「第2波攻撃隊、発進準備よろし」と二航戦の山口多聞少将より早々に報告が入り、司令部では一航戦の状況も見て「発艦よし」を各艦に伝達する。


 午前9時15分、敵機動部隊攻撃隊(繁岩隊)第2波として、艦戦24機、艦爆45機、艦攻41機、計110機からなる攻撃隊を送り出した。


 南雲中将は2波からなる攻撃隊を送り出したあとは、安堵と緊張の入り混じったような雰囲気で幕僚とのやり取りを進めている。

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