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第17話 赤城ふたたび

 6月3日、運命の日の前日の夜、北太平洋を行く『赤城』の艦上に私とイソエは放り出された。


 無論、元帥府で着ていた服はもはや無くなっており、恥ずかしながらマッパでの降臨だ。

 均整の取れた身体をしたイソエは、降臨の際に臀部をしたたかに打ち、何故か私に恨み言を言う。


「痛い、痛い。痛いし、痛いし……恥ずかしいし」


「分かったから、山本尚書令はこの場で待っていてくれ」


 そう言って微かに明るく見える灯火管制下の艦橋の方に向かって歩を進めると、前の方から声がする。


「おい、動くな」

 相手の夜目が効く中、私は両手を上げて抵抗しない旨を伝える。


「私は高天原からの御使みつかいだ。分からなければ……」

 そういった刹那、相手から震え声を聞かされる。


「ひ、ひょっとして島村様でしょうか」

「いかにも、島村実継だ。なぜ知っている?」

「実は前任者からの引き継ぎで……」


 どうやら、前任の中尉の引き継ぎ宜しく『ハワイ沖の幽霊』として私とチハヤのことが伝わっているらしい。


 話をすると有り難いことに防暑服を二揃い用意してもらい、艦橋の気象班室で服に袖を通す。

 イソエも胸を苦しそうに潰しながら防暑服をどうにか身につけ、いよいよ草鹿少将を第二中甲板の参謀長室に訪ねることとなった。

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