第15話 日米決戦の分水嶺
−−−−皇紀2602年5月
大本営よりMI(ミッドウェー島攻略)作戦が下令され現地時間6月6日を期して上陸作戦を実施することとなった。
今回の南雲機動部隊の役回りは空襲部隊であり、ミッドウェー島の航空基地の破壊と出現するかも知れない米機動部隊との決戦の2つの役目を与えられていた。
南雲機動部隊編成
指揮官:南雲忠一中将
第一航空戦隊 航空母艦:『赤城』、『加賀』
第二航空戦隊 航空母艦:『飛龍』、『蒼龍』
第八戦隊 重巡洋艦:『利根』、『筑摩』
第三戦隊 戦艦:『榛名』、『霧島』
第十戦隊 軽巡洋艦:『長良』
第四駆逐隊 駆逐艦:『嵐』、『野分』、『萩風』、『舞風』
第十駆逐隊 駆逐艦:『風雲』、『夕雲』、『巻雲』、『秋雲』
第十七駆逐隊 駆逐艦:『磯風』、『浦風』、『浜風』、『谷風』
部隊直率 タンカー 八隻
高天原の元帥府水師営では、MI作戦の指導について会議が持たれていた。
「MI作戦については既に報じられた通り、連合艦隊挙げての出撃となるが、ミッドウェー島方面のみで見ると我軍の空母戦力は四隻、敵の空母戦力は三隻に加えてミッドウェー基地に百二十六機の航空部隊が展開している。予想損失は空母四隻喪失、予想戦果は空母一隻撃沈となっておる。この戦い、日米決戦の分水嶺となるかもしれん。誰か戦場に出向いて勝ち名乗りを受けようとする猛者はおらぬか」
会議を仕切る伏見宮元帥も語気は荒いが、覇気は薄い。負ける戦いと知ってなお、手を挙げるには蛮勇を振るう猛者たる資格を持つものでないと難しい。
「負ける前提で受けて立つには元帥府の名折れとなります。何か勝ち筋を感じられる情報をお持ちでは御座いませんか」
次席水師の島村実継がなにかのきっかけになればと話を誘う。
「そうじゃのう……連合艦隊司令部はすでに勝った気でおるらしい。しっかりと四月一日付の人事異動をすませたおかげで、まだ、現場の関係はギクシャクしてはいるが……士官から兵卒に至るまで負ける気がせぬという程の士気の高さじゃ」
驕りと油断、練度低下と慢心しか垣間見えない情報に水師営の会議は踊る。
「敵の方に目を向けよう。かの猛将ハルゼー中将が皮膚病で入院したようで、代理の指揮はフレッチャー少将が取るらしい。これで我軍航空指揮官の淵田美津雄隊長が虫垂炎で倒れた分を補って余りあるじゃろう」
そんな不健康自慢を始めたら、山本五十六連合艦隊司令長官が腹痛だったり、航空参謀の源田実少佐も体調を崩していたりする。
甲論乙駁、否、丙論丁駁の議論は、伏見宮の提案により休憩に入る。




