第11話 史上初の空母対空母
「『翔鶴』索敵2号機より入電、敵ハ戦艦一、甲巡三、他一」
司令部では「他一」が『エンタープライズ』か否かで意見が割れたが、2航戦の山口多聞少将はあくまでも真珠湾を叩くべしとして「第2撃の準備完了」と報告がある。
頭を抱える南雲中将に草鹿参謀長は、真珠湾に第2撃を加えるよりも戦艦を含む敵艦隊を屠ったほうが爾後の南方作戦の側面支援につながると進言し、遂に艦戦12機、艦爆18機、艦攻18機の合計48機(『翔鶴』遠藤大尉指揮)の攻撃隊を『赤城』、『加賀』、『翔鶴』から発進させることとした。
仮に敵艦隊に『エンタープライズ』が含まれていれば、開戦劈頭のハワイ海戦で史上初の空母対空母の決戦ということになる。
12月8日午前7時、攻撃隊48機を見送るやいなや第2波攻撃隊の着艦が始まる。第2波は強襲ということもあり第1波よりも大きな損害が予想された。しかも、整然と帰還した第1波と比べると三々五々の帰還状況で、各機の被弾状況からも激戦の痕が垣間見える。
航空参謀の源田中佐が報告する。
「艦攻隊の報告によりますと、敵飛行場のフォード基地、ホイーラー基地、ヒッカム基地、カネオヘ基地、ハレイワ基地すべて爆撃により使用不可となっている模様であります」
南雲長官がそれに応えて言う。
「よろしい、これで残るは敵空母のみだな」
午前8時30分、一航艦司令部から各艦に向けて「対空警戒ヲ厳ニセヨ」の信号が送られる。これは、午前3時22分の第一撃から5時間ほどが経過したことから、敵に接触されていれば敵攻撃隊が現われる頃合いということで下令されたものだ。
午前9時に第2波攻撃隊の収容を切り上げることとなり、未帰還機の集計が行われる。司令部に艦戦36機中34機、艦爆80機中72機、艦攻54機中50機、計170機中156機が帰還し、索敵中の艦攻4機を含む14機の未帰還機が報告された。
それを聞いたチナツは大げさにガッカリとしょげていたが、実質未帰還機は一〇機に過ぎない。94%の生還率は十分に恩寵が効いているのではないだろうか。




