92話 ダンジョンアタック開始!
無事ワイバーン狩りも終了してお次はダンジョンだ。
ソードは単体で五十層くらいまでは行ったそうだ。
「となると、百層くらいはあるだろうな。
最後のボスはエンシェントドラゴンがセオリーだ」
って言ったら、唖然とするソード。
「マジか?」
「もちろん。古竜か……ワクワクするな。絶対しゃべれるだろうから、是非是非会話せねば」
恐らく創世記からいるだろう、が、そのダンジョンがいつから出来たかが問題だな。
ダンジョンが出来上がって閉じ込められてたら、以降の世俗の状況は知らないだろう。
まぁ、創世記の話を聞かせてもらおう。
「お前って、そんなに知識を持ってるのに、まだ必要なのかよ?」
ソードが呆れた声を出した。
「別世界の知識はあるが、この世界の知識が少ない。それに、知りたいことはたくさんある。言っておくが、冒険者とはそういうものの、はずだ。学者は机で冒険者がもたらす情報を論じ、冒険者は知りたいことを探求しに外へ出かけ、未知と遭遇し、時に会話し、時に発見し、時に採集および狩猟する。わかっているか?」
指をビシ!と突き出した。
「大丈夫、わかってきた。で、会話、採集、狩猟するときも楽しむ、ってことだろ?」
「そーーーーだ!」
ソードは笑うと、頭をなでてきた。
あ、ソードがちょっとだけ年齢相応に見えたぞ?
やっぱり美容製品の効果はソードにもあったな。
ダンジョンへ向かう道中、なんだかすごい歓待されてるんだけど?
「…………?」
首をかしげたら、ウンザリ顔のソードが頭をなでた。
「確かに、踏破する、って言ったけど、コレはねーだろ。プレッシャーかけようとしてんのか?」
「ん? ダンジョン踏破で皆がワクワクしてるってことか? なら、挨拶した方がいいぞ? ワクワク感は、皆で味わうべきだ!」
ひらり、とリョークの上に乗り、拡声魔術で叫んだ。
「ダンジョン踏破にワクワクしている諸君! 今から私とソードが、ダンジョンの最深部まで行って、ボスと会話して倒してくるぞ! 冒険譚を……語るような冒険譚があれば、語ってやる! 楽しみに待っていろ!」
ワーッと盛り上がり、なぜか笑ってるやつもいる。
「ソードも乗れ! お前も宣誓しろ!」
ソードが額に手を打ったが、ため息をついた後、決心したようにリョークに乗った。
「冒険者ソードだ! 横にいるインドラと、【オールラウンダーズ】ってパーティを組んだ! これから俺とコイツと、このゴーレムでダンジョンに潜る! 必ず最深部まで到達してみせよう!」
今度は笑われずに、ものすごい歓声に包まれた。
「なぜ、私は笑われたのだ?」
首をかしげると、ソードが笑う。
「お前のワクワク感は、バカっぽいからだよ」
ひどいこと言われた。
ダンジョン前も、ものすごく盛り上がっている。
選手入場の際、歓待するファンのようだな。
あるいは初売りで来場する際のスタッフ。
「ハイタッチしながら入らなければならないお作法か?」
「ねーよ。
何の祝だ」
「そうだな、どちらかといえば無事に踏破したときにやりたいな」
ソード、ちょっと考えて、
「あ、それはちょっと盛り上がるかも」
思いついた感じにつぶやいた。
ソードが、念のためっぽく訊いてきた。
「答えはわかるが念のため訊くわ。俺、五十階まで到達してて、五十階までショートカット出来る魔導具持ってんだけど、使うか?」
ブルブルブルブル。
高速で首を振る。
「だと思った。地図は……いらねーよな。お前とリョークが作る地図の方が高性能だ」
「お前は一度通った道をまた通るのはつまらないか?」
逆に訊いた。
「つまらないなら先に五十階に行ってて待っててくれればいいぞ? 私ははじめてだから、順に通っていきたい」
「一緒に行く。楽しむって決めたからな!」
おぉ!
ようやくその気になったか!
「じゃあ、どうせ浅い階は簡単そうだから、止まらない縛りで行きたい。お前は私の通った足跡を、間違いなく辿る、って縛りで行け」
ソード、笑顔で固まった。
「……難易度、高くねーか?」
「大丈夫だ! お前なら簡単すぎて欠伸しながらでも出来るだろう!」
「ちょっと止めてよ、俺って普通の人間だから。お前みたいな超人と一緒にしないでよ」
何言ってるんだ英雄様が。ウププ。
って考えた途端!
「にゅー!」
また唇つかむー!
「お前のその顔、ムカつく」
理不尽だ!
スマートウォッチみたいな、SFアニメぽいリストバンドを渡す。
「そのリストバンドは無線通信魔導具だ。そのままでも会話出来るが、腕を近づけた方が聞き取りやすいし話しやすい。他に、タップする、もしくは命令すればリョークが作った地図が出る」
私は青緑、ソードはホワイトベースだ。
「お前って、たまーにこーいったかっこいいの作るんだよなー。地図が出る以外の機能はあんの?」
「生体情報だな。健康状態がわかるぞ。あとは、時計機能だ。あの、もらった懐中時計もレトロで良いものだが、冒険者はこっちの方がすぐわかるからな。魔素で動くと思うが、残量次第ではしばらく魔石を当ててくれ。他にも[アプリ]を[インスト……失礼、機能を入れられるぞ? 希望が出たら言ってくれ」
「了解!」
うれしそうに言った。
絶対、ソードってガジェット好きだ。
別世界にいたらSFアニメにハマるタイプだな。
「さて」
柔軟体操し始める私たち。
リョークなんてやっても意味ないのにやってる。
超ラブリー‼
順番が来て、ソードが掛け声。
「よし! 行くぞ!」
突入した。
ようやく王都のダンジョンに潜りました!
簡単にはクリア出来ません。暫く続きます。




