涙
久しぶりに投稿!!
お待たせしました!!
タマオが水晶玉に成っている為か、ヒオのステータスが視界に浮かぶ。
確かヒオのレベルが1に下がっている。
だがレベル1にしてはステータスはあまり下がっていない。
身体能力は俺のステータスに色が付いた程度だが、
魔力量、魔法攻撃力、魔法防御力といったステータスは軒並み高い数値を現している。
レベルアップの上昇量がどれほどか知らないが、これなら直ぐに戦線復帰できるのではないか?
「ふえ? あ、あまり魔力が下がってません?」
「何?特殊スキルがプラスされて、成長の幅が増えたって事は結果的にプラスって事?」
こりゃいい。
もう、勇者いらないじゃん。
メリットは擬似勇者軍団を作れる。
超能力組織見たく、即戦力を増やせる。
ぶっちゃけ、強力な軍団揃えたら、次元の悪魔だが、二次元の花嫁だか知らないが、目じゃ無いじゃん。
勇者、いらないじゃん。
伝説の武器は持たないけど、化け物じみたステータスと特殊スキルを備えた強力な軍団を作れるじゃん。
でもデメリットは、次元の悪魔と同じ能力を公表する事と、必ずしも能力に覚醒した奴らが俺のいう事を聞くとは限らないって事か。
強すぎる力や武器は、人の心を乱す。
スポーツでも自分の才能にかまけたり、慢心して性格が最悪な奴とか異様にムカつく奴も多い。
小説や漫画でも何かしらの過ぎた能力を持った奴は調子に乗って欲望のままに行動するからな。
下手すりゃ、強大な敵を増やすだけになる。
それに、勇者は選定される…つまりバックアップが存在する。
強力な能力者を生産できるって事は勇者を召喚できる巫女以上に重要なポジションになる訳だが、
未だ、王妃と国王の意図も分からないから、軽々と話すのは躊躇われる。
勇者は召喚以外にも選定という形でなれる。
強力な特殊スキルを得た者が勇者になった後、そいつが自分より強力な存在を呼べる召喚の巫女以上に厄介な俺の存在を容認するだろうか?
となると、秘密を知るヒオの存在が危ないなぁ。
裏表の無い娘っぽいけど、未だこの娘の事はよく知らない。
監視役かもしれないし、敵か味方かも分からない。
どちらにしても俺の能力については知らない方がいいだろう。
旅に連れ出そうにも、召喚の巫女って勇者を呼ぶ役目が在る以上、俺が死んだら代わりを召喚するかタマオに選定させるだろうが、タマオの持ち主に成りたがる選定勇者は王妃を始め、謁見の間にいた者たちの反応からいないだろ。
となると、召喚の巫女はタマオの生贄(笑)勇者を呼ぶる為、必要。
命の危険がある次元の悪魔の討伐や、レベル上げの旅に同行する事は無いだろう。
この世界に隔離してしまえば秘密が漏れる事は無いが、そのあと、向こうの世界で活動すると
巫女は何処言った?って騒ぎになる。
シラばっくれば済むか?
「す、すごいです勇者様。 これなら次元の悪魔にも勝てます!!」
俺の黒い思考に気付かず、喜びの表情を上げるヒオ。
俺の能力が次元の悪魔と酷似している事を知っているのはコイツだけなんだよなぁ。
下手に次元の悪魔を召喚したとか知れたら彼女の立場は危ないだろうし……
隠しごと、下手そうなんだよな…。
責任とかで罰せられるか、下手すりゃ処刑物だよな?
彼女を守って俺も無事で入れる方法。
そういえば…タマオの能力に記憶を消す光があったな。
幸い、彼女に召喚能力が失われた訳では無いし
此処には彼女を監視する目はない。
俺の意志をくみ取ったのか、自称伝説の球は怪しく光り出した。
◇◆◇◆◇◆
ヒオside
「あれ?」
「どうかしたか? ヒオ?」
『おやおや~ヒオちゃん、勇者様の顔を見て、トリップですか~』
目の前に私が召喚した勇者さんと、ふよふよと浮くタマオさんが、私を見ている。
「あれ? 私、なんで此処に……?」
勇者さまの部屋?
あれ、何故、此処に?
そして、だんだん頭が覚醒して冴えて思い出す。
そ、そうだ私は、召喚された勇者さまがタマオさん関連で落ち込んでいるのではと心配になって来たのでした。
でも、なんだか、とても怖い夢をみていたみたいです。
それも、間違えて勇者さんでは無く、魔王を召喚してしまい、魔界に攫われる夢……
「なんか、疲れているみたいだけど大丈夫? 俺のを事は気にせず休んでいいぞ?」
『そうです 勇者様はこれから、私と大人の階段を三段飛ばしで駆け上がるんですぅ♪』
「す、すみません!! 私ったら!! ゆ、勇者さんの前で…し、失礼します!!」
恥ずかしくなって私は、急いで勇者さんの部屋から出る。
うう、やっぱり召喚の後は疲れて心の揺れ幅が不安定になる。
早く部屋に戻って寝よう。
それに、これで世界は救われる。
球の勇者という不安はあるけど……召喚勇者は強力な力を持つという。
きっと世界を救ってくれる。
だって私が召喚した勇者様だから、
きっと大丈夫だから。
「ヒ、ヒオ殿? 如何されたのですか?」
「え?」
顔を紅くしつつ、急いで殿中を歩いてると、女騎士さんが私に駆け寄る。
「あ、あれ?」
気付くと、私の頬に涙が流れていた。
ぽたぽたと、私の掌に涙がこぼれる。
お、おかしいな、勇者さまの優しさに触れたから?
「ま、まさか勇者に何かされたのですか!?」
「ふえ…ち、ちがいます。 勇者さまとは少し、お話しただけで…何もされてませんってばぁ!!」
腰に差した剣に手を当て、勇者さまのいる部屋に乗り込もうとする女騎士さんをあわてて止める。
「……確かに着衣に乱れはありませんし、匂いもありませんね。それでは何故、涙を?」
「すみません、勇者様を召喚してきっと感極まっただけですよぉ。 コレでこの国が救われると思うと…使命を全うできたって思うと…」
うん……きっとそう…感極まっただけだ。
最近、不幸なことが続いたから涙もろくなって困る。
「そうでしたか……一時とは言え、勇者様を信じなかった私をお許しください。」
「いえ、私が勘違いされる様な事をしただけです。 心配してくれてありがとうございます。」
眉間の皺が取れ、柔和な笑みを見せる女騎士さん。
勇者さまの部屋に向かって歩いて来たという事は、彼女がきっと勇者の同行者に成るのだろう。
召喚士か取り柄のない私と違って勇者様と一緒に世界を救う仲間になるんだ。
いいなぁ……
「出立は明日からですか?」
「ええ、必ずや次元の悪魔を討伐し、世界を救ってまいります。ヒオ殿」
そういって勇者さまの部屋に向かう女騎士さん。
これから勇者さまに自己紹介に行くのでしょうか。
彼女はきっと勇者さまと多くの事を経験するんだろうなぁ。
物語見たく、一緒に苦難を乗り越える。
城から出れない私も出来る限り力にならないと……
でも…なんでだろう?
なんで、心が痛いんだろう。
疲れたから?
感極まったから涙を流したんじゃないのかな?
チクリとした心の痛みに首をかしげつつも、私は自分の部屋に戻った。
何時もと違う魔力の調子に疑問を感じながら、私は勇者さまの無事を祈って歩き出した。




