ほぼ、呪いの武器だよ!!
この物語の真・ヒロイン? 登場。
「伝承、予言通り世界の加護も確りと得ている様ですね。
其れでは、巫女ヒオ? 神器を勇者様に……」
「ひゃ、ひゃい!」
あ、噛んだ……
俺に見捨てられるという悲愴な結末でも想像していた所に急に話を振られたのでは仕方ない…
噛んだことで、青い顔色が、羞恥で真っ赤になる……
うん コスプレ女、召喚巫女と続き、信号機というあだ名を彼女に送ろう。
てか、ヒオって名前なのね巫女さん。
あだ名をつけようにも短すぎる名前だな。
覚えやすくていいけど。
そうして、水晶玉?を持って俺に近寄ってくる。
……これって真逆、魔力とか、ステータスを診断する測定器か?
次元移動能力?を知られると不味いんだよなぁ……
水晶玉を持って近くに来たヒオにだけ聞こえるように呟く。
(加護の詳細は誰にも話すな……もし話したら…)
(ひうっ!! わ、分かりました。)
俺の囁きに震え上がりつつも小声で返す。小動物
若干、罪悪感と俺の良心が痛むが、これも仕方ない…
保身って大事ですよ?
「そ、それではこの神器に触れてください。」
「ハイよ……」
今、思えば、この時点で俺は詰んでいた……
さっさとこの世界を見捨てて帰るべきだった。
因縁の始まりか、運命の出会いかは兎も角、本格的に俺のスポーツ的な物語はファンタジーな物語に大きく脱線する事になったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇
測定器は壊すためにある。
水晶玉しかり、宇宙の戦闘民族が持つ片眼鏡しかり、体重計しかりだ。
つまり、ぶっ壊してしまえば俺の能力はバレない!!
むしろ壊せば褒められる!!
俺の保身の為にも此処で割ってやる!!
燃え上がれ、俺の魔力よ!震えるぞハート!!叩き割るぜボール!!!魔力オーバードライブ━━!!!!
魔力なんて概念、到底理解できんが、割れるくらいの力を込めてやんよ━━━━!!
「ぐ、ぬおおおおおお!!!」
「あ、あの そんなに力を込めなくても触れるだけでいいんですけど…。」
ぐぅ、たかが測定器(?)な水晶玉の分際で、生意気にもヒビが入るどころか無反応だと!!
水晶玉の癖に生意気な!!
―デロデロデロデロ~~~♫―
『キタキタキタキタキタ━━━━!!
きゃ~~ん♥ この人の魔力すご~い♫
ズンズン私の中に入ってくる~~♫
前の男を忘れさせるほど凄いの クるの~~~~~♥♥』
「いッ!?」
何だこの声、水晶玉から聞こえてくる!!
気持ち悪くなって咄嗟に手を離そうとするが……
「離れない!? なんだこれ!! どうなってる!!」
ブンブンと手を振ったり、放り投げようと試みるが、この球、俺の手に吸い付くようにくっ付いていて離れない!!
『無駄無駄無駄無駄ぁ~~♫ 運命の人は絶対に離しません!!
主人に先立たれ、悲しみに袖を濡らす日々は、もう御終い!!
私、新しい恋に生きます!!』
「オイ、何だこいつ!! 誰か説明してくれ!!」
王妃が頭を抱え、ヒオは気の毒なものを見るような微妙な表情で俺を見る。
こ、こいつ等、こうなる事を知ってて黙ってやがったな!!
『魔力検査終了♫ 球の勇者の適合者と確認しましたぁん♫』
ちょっと待て!!
今、球の勇者っていったか!?
って事はコイツが伝説の武器!?
『さようなら先代のご主人様!! こんにちは新・ご主人様!!!
歩む道は愛の覇道
ハッピーエンドに向けて突き進みましょう!! さぁご主人様!! 私に名をお聞かせください!!
今、この場、この瞬間から私たちの新しい伝説を作るのです!!』
「……児玉・浩一」
何らかの強制力が働いて、抵抗むなしく名乗ってしまう。 こ、コイツ!!
『浩一様!! 名を頂戴しました。 持ち主の魔力検査! 手汗による血液認証!! 所有者の名前による登録全て完了しました!! 此処に、聖球タマオの名の下に児玉・浩一を私のご主人様と認め、今代の球の勇者と認めます!!』
ヤバイ、コレが伝説の武器?
俺の前任者に先とは違う意味で同情する。
武器が球だったとか、世界の人々を救う為に戦死したとかじゃない。
この伝説の武器に四六時中、付きまとわれたからだ…
案外、精神的疲労が遠因じゃないだろうか?
こうして、この日、この時を持って俺は「球の勇者」となり、
伝説の武器という名の呪いの武器? 聖球タマオとの出会いを果たした。
さっきと違う意味で先行きが不安になった。
彼女の名前を漢字表記にすると珠緒になります。
選定勇者では無く、召喚勇者を持ち主にしたのは皆、彼女の存在を知っており、世界の危機と天秤をかけても嫌がったのも理由の一つになります。




