他にも勇者がいるそうです。 なら呼ぶなよ!!
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修正しました。
「私が、この国の王妃…ベアトリス・L・ユグドラシルです。 勇者様、面をあげなさい。」
謁見の間にて、国王では無く、何故か王妃が俺に声を掛ける。
うん、国王では無く、王妃がだ。
コスプレ女改め、召喚の巫女が国王より先に、王妃に謁見すると言いかけた事から、予想はしていたがこの国は表向きは王政で実質の最高権力者は王妃が握っているみたいだ。
え、王妃様の容姿?
漆の様な黒髪と瞳
雪の様な白い肌
限界突破の神々の双山
20代前半と言われても通用する若さ、
瑞々しくも真紅の唇…を持つ美女ですな。
クリスの妹も、俺の隣にいる召喚の巫女もレベルが高い美少女だが、王妃は容姿に加え、何か圧倒されるような凄みを感じる。
対して、玉座に鎮座する国王は影が薄い。
いや、第一印象で決めるのは早計か…こう言うのに限って実は表で無能や飾りと言われてても実際は影で有能だったりするからな。
事実、こんなやり手で、美人な妃をもらっている訳だし…
う、羨ましくなんてないんだからね!! 勘違いしないでよ!!
ていうか、王妃様、国王陛下の紹介はいいのか?
国王ですよね? この国トップですよね、王妃様?
王妃は王を支える立場ですよね。
「先ずは事情を話しましょう、この国は現在、滅びに直面しております。」
国王━━━━!!
女王…いや王妃(俺に限らず、多分、皆そう思っている筈)の話を纏めるとこうなる。
どこの世界にも世界の終末を予言というのは有るみたいで、この世界にも例外無くあったらしい。
次元の悪魔と呼ばれる謎の存在が幾度となく現れ、この世界を滅ぼしに現れると…
だが、この国は予言を軽視して誰も気にも止めなかったらしい。
(まぁ俺も、ノストラダムスやマヤ文明の予言を信じなかった口だし、分からないでも無い。)
で、今年がその予言の年だったのだが、世界中で飢饉や疫病が発生しだし、迷宮と魔物が活性化するという前兆が起きた。
そして災厄が起きたのは一ヶ月前、世界中に次元の亀裂が入り、そこから大量の凶悪な次元の悪魔が
襲ってきた。
この次元の悪魔…殺戮対象はこの世界、全てで人、魔族、魔物関係なく殺戮し始めたらしい。
世界規模での大災害になった。
そしてこの国は幸いにも王妃が万が一に備え、各地に騎士隊を派遣し、冒険者ギルドと連携し辛くも撃退したが予言には次元の悪魔は周期的に次元を切り裂いて現れ、第一次災厄は偵察の様な物で、次第により強力になっていくそうだ。
世界中で発生する 飢饉、疫病、迷宮と魔物の活性化で疲弊した国に次第に強力になっていく悪魔。
初めの侵攻ですら辛勝だった事から次の襲来に対抗する為、勇者召喚と勇者選定に乗り出した。
「……話は分かった。
俺がこの世界を見限っても世界滅亡に巻き込まれ、道連れになる事も理解した。
こんな若い身空で死にたくないし、それなりの報酬、援助を用意するというなら協力もする。」
「勿論、それ相応の報酬、それにあらゆる支援をさせていただきます。」
要は召喚された時点で、俺に逃げ道は無い。
戦う以外に選択肢がない。
非協力的だったら、俺を殺して再召喚する可能性もある。
召喚の巫女が俺を戦争に投入する事に忌避感を示したのは、既にそのような状況化では無いということだろうか?
それよりも、聞き逃せない単語があった。
「一つ訊きたい…… 勇者選定、察するに召喚しなくてもこの世界には勇者候補がいて、複数の勇者がいる様に聞こえたが?」
途端に空気が重くなった。
あ、アレ? 藪蛇だったか?
俺、やっちゃった?
王妃がとても気まずい様に顔を曇らせ、召喚の巫女が涙目になる。
あ、嫌な予感がビンビン感じる。
「お察しの通り、勇者は複数存在し、召喚以外にも古の勇者が遺した伝説の武器に選定されてこの世界の者が勇者になるケースがあります。 我が国には幸いにも伝説の武器に選定された勇者が一人いましたが……」
あ、過去形だ……
「貴方の前任の選定勇者は一ヶ月前の災害で……戦死しました。」




